チャナティップからヒーローの座を奪った豪州系マレー人とウルトラ・マレーシア。西野タイは混戦の2次予選を勝ち抜けるか

2019年11月17日 佐々木裕介

チャナティップのゴールで先制したタイだが、次第にリズムを失い…

マレーシア戦で先制点を奪ったチャナティップ(18番)だが、タイはアウェーで逆転負けを喫した。(C) Getty Images

 カタール・ワールドカップ・アジア2次予選、グループG首位のタイ代表は14日、クアラルンプールでマレーシア代表とのアウェーマッチに挑んだ。

 雨季のマレーシア、試合開始4時間前から降り続いた雨を含んだピッチが、試合を難しくすることは誰の目にも明らかだった。特に速いテンポでのパスワークを売りにするタイにとっては。

 だが予想に反し、先に試合を動かしたのはタイ代表だった。7分、右サイドの崩しからMFエカニット(チェンライ・U)のクロスをMFチャナティップ(札幌)が綺麗に合わせて先制に成功する。しかしタイ代表にとってのハイライトはここだった。次第にリズムを失い、失速していく。

 そして26分、マレーシア代表が反撃の狼煙を上げる。MFシャマー(ジョホールDT)の左からのクロスにMFギャン(ペラクFA)が合わせて同点に追い付く。この日、タイ代表の右サイドバック、トリスタンが高い位置を取ることを知っていた彼らはその背後を幾度となく攻略していた。

 後半もマレーシア代表の優勢は変わらない。57分にはギャンの美しいループパスをMFサマレー(パハンFA)が豪快に蹴り込み追加点を上げた。スコアはそのまま動かず、マレーシア代表が逆転で勝利した。

 アウェーの地で先制ゴールをもぎ取り、この日のヒーローになるであろうと目されたチャナティップから主役の座を奪ったのは、1得点・1アシストと光り放ったマレーシア代表MFブレンダン・ギャンだった。先制されても勇敢に立ち向かったハリマウ・マラヤ(マレーシア代表の愛称)の攻撃の中心には、いつも彼の姿があった。

「タイはいつでもタフで強く、私のキャリアの中でいつもそう感じてきたんです。今日は私たちのホームマッチ、ファンが作ってくれた雰囲気が背中を押してくれて勝てたけど、決して簡単ではなかったですよ。日本やヨーロッパでプレーしている選手もいる彼ら相手に、私たちはチームがひとつになって奮起し、逆転できたんです。素晴らしい試合ができたと思っています」

 試合後のミックスゾーンでタイ代表の印象を語ってくれた豪州系マレー人の彼の表情からは、滲み出る嬉しさが感じ取れた。
 

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