【横浜FC】「粘る。もがく」努力の大切さを証明する中村俊輔の今とこれから

2019年11月17日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「やっぱり、上手くなりたいっていうのがあった」

不遇の時期を経て、レギュラーを奪取した俊輔。「頑張ってやってきたからよかった、あきらめなくてよかった」。(C)SOCCER DIGEST

[J2第41節]岡山0-1横浜FC/11月16日/Cスタ

 以前、中村俊輔はこんなことを言っていた。

「今、努力していることが、すぐ結果として出るか分からないけど、続けるしかない」

 41歳になり、自身初となる2部のカテゴリーにいても、そのスタンスは変わらない。1-0で勝利した今節の岡山戦を含め、直近4試合は先発出場中で、チームも4連勝を達成。最終節を前に、13年ぶりのJ1復帰に王手をかける横浜FCで不可欠な戦力と見なされているが、それ以前はベンチスタートはおろか、メンバーにさえ入れていなかった。

「まあまあまあ、腐る年でもないし」と自らを客観視するが、それでも試合に絡めなければ、焦ったし、不安にもなった。

 だが、それ以上に「やっぱり、上手くなりたいっていうのがあった」。だから、モチベーションが下がることはなかった。なによりも、努力を続けることの意味を知っている。「一生懸命に取り組んでいれば、自然と調子も上がっていく」。パス回しでフリーマンを任されれば、「ボランチの位置でのボールの回し方とか、だんだん染みついてきた」という。

 そうやって準備をしてきた。だから、6試合ぶりにピッチに立った38節の東京V戦で、移籍後初ゴールという最高のアピールで、2-1の勝利に貢献できたのだろう。繰り返しになるが、俊輔はそこから4試合連続スタメン、チームも4連勝を飾る。昇格に向け、怒涛のラストスパートの立役者になっている。
 
「もう後がない」という危機感を抱きながらも、必ずポジションを奪い返せると信じて、トレーニングに励んできた。その結果、今の自分がある。磐田時代にもピッチに立てない時期はあったが、鍛錬を怠らなかった。「そういうのも、こうやってつながってきてるんだなって」と改めて実感している。

「ずっとやっていたら、どこかで"引っかかる"。それが数か月後か1年後か分からないけど。俺はカテゴリーが下がったからあれだけど、こうやってまたプレーできている。だから、あきらめないというか、粘る。もがく。こうやってゲームができて、痺れる試合にも出られる。41になって、またそれが体験できている。だから、面白い」

 横浜FC移籍後の取材を通じて感じるのは、試合に出られない時も、出ている時も、俊輔は一定のテンションでサッカーと向き合っているということだ。うまくいっていなければ、改善策を探る。上手くいっている時も、より良くなるよう改善策を探っている。

 満足することはない。横浜FCでは、こだわりのあるトップ下ではなく、ボランチを任されているが、下平隆宏監督が落とし込む戦術にフィットするための努力を続け、そのうえでいかに自分だけの"色"を出すかを模索する。

 だから、現状レギュラーの座にあっても、チームが好調をキープしていても、気がゆるむことはない。ひとまずはJ1昇格を決めるために、練習でも試合でも全力を尽くすだけだ。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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