堪え切れず涙も…電撃引退発表のビジャが記者会見で語った、美学と感謝と元日決戦への想い

2019年11月13日 サッカーダイジェストWeb編集部

「人生においていろいろな決断をしてきたが、最高の決断は彼女と結婚したこと」

会見場で家族とともに撮影に応じたビジャ。これまで大きな支えとなってきた家族に感謝の言葉を述べた。写真:川本学

 突然の発表だった。
「今シーズン限りでプロとしてのキャリアに終止符を打つ。引退を決意した」

 J1ヴィッセル神戸の元スペイン代表FWダビド・ビジャが13日、神戸市内のホテルで記者会見し、今季限りでの現役引退を表明した。

 今季神戸に加入。12月3日に38歳を迎えるビジャだが、J1リーグ出場26試合で12得点と得点ランク5位タイにつけており、円熟の決定力は健在だった。神戸とは1年契約だが、クラブは契約延長を視野に入れていたこともあり、来季も神戸の最前線を支えるものと考えられていた。

 だが、ビジャは「この決断は長く考えてきたこと。家族と少しずつ話し合い、タイミングを窺っていた。今年に入って自分の中で今がタイミングなのではないかと感じるようになった」と明かし、「サッカーに引退させられるのではなく、自分の意思でサッカーを引退したいと考えてきた」と引退理由を語り、引き際の美学をにじませた。

 会見冒頭のスピーチは約25分間にも及んだ。プロのキャリアをスタートさせたスポルティング・ヒホンから始まり、これまで渡り歩いたクラブ一つひとつに丁寧に感謝の言葉を述べた。神戸に対しては「新たな国でチャンスを与えてもらった。自分を信じて賭けてくれた。年齢を重ねた自分のような選手を信じてくれたことを本当に感謝している」と頭を下げた。

 家族の話題に触れると、堪え切れず涙を流した。
「子どもたちは自分と向き合うための力を与えてきてくれた。一番大切な存在である(妻の)パトリシアにも感謝したい。人生においていろいろな決断をしてきたが、最高の決断は彼女と結婚したこと」
 会見場の最前列に座った家族に優しく語りかけた姿は、ビジャの人柄を物語っていた。

 会見にはフィンク監督やイニエスタら神戸の全選手、全スタッフも駆け付け、ビジャの言葉に耳を傾けた。スペイン代表やバルセロナでも戦い抜いた盟友イニエスタにも「神戸の興味に関して、最初に私に連絡をくれ。ここでの適応をサポートしてくれた。彼と生きてきたことは、かけがえのないもの」と深い感謝を口にした。

 今後は米メジャーリーグ・サッカー(MLS)2部に相当するユナイテッド・サッカーリーグ(USL)に21年から参入することが決まった、クイーンズボロFCの共同オーナーとして経営に参画することも明かした。

 12月7日の最終節・磐田戦(ノエスタ)後に引退セレモニーが行なわれるが、戦う意欲は衰えていない。12月21日の天皇杯準決勝・清水戦(ノエスタ)に敗れればラストゲームとなるが、神戸が勝ち進めば20年1月1日に新国立競技場のこけら落としとして行なわれる天皇杯決勝が引退試合になる。

「引退は今日ではない。(来年)1月1日に天皇杯優勝を成し遂げて引退することが願い」と強調し、「最後に(イニエスタと)一緒に、他のチームメイトも一緒に天皇杯のタイトルを持ち上げることができれば幸せ」と宣言。神戸にとって悲願の初タイトルを置き土産にすることを誓った。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部
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