「W杯で起きていることを知ってほしい」“死の組”首位通過からの暗転…U-17日本代表を襲った突然の出来事

2019年11月08日 松尾祐希

強豪揃いのグループを首位通過。海外記者からも賞賛の声が上がるほどの出来だった

メキシコ戦に敗れ、悔しさに暮れたU-17日本代表の選手たち。この経験を次のステージで活かしてほしい。(C) Getty Images

 ホイッスルが鳴った瞬間、選手たちは崩れ落ちた。西川潤(桐光学園)は視線を落とし、藤田譲瑠チマ(東京ヴェルディユース)はピッチに倒れ込んで天を仰いだ。試合後のミックスゾーンに到着しても、気持ちはまだ落ち着かない。鈴木海音(ジュビロ磐田U-18)が堪え切れずに嗚咽を漏らし、村上陽介(大宮アルディージャU-18)は堪え切れない様子を見せた。"こんなはずではない"。日本の選手たちは一様にそう言わんばかりの表情で、敗戦を受け入れられずにいた。

 森山佳郎監督が率いるU-17日本代表の冒険はラウンド・オブ16で幕を閉じた。二度の優勝経験を誇るメキシコを相手に0-2の敗戦。ただ、サッカー王国・ブラジルのファンを魅了したのは間違いない。

 オランダとの初戦は3−0の快勝劇。西川と若月大和(桐生一)のコンビが躍動し、欧州王者を圧倒した。相手に研究されたアメリカ戦はスコアレスドローに終わったが、続くセネガル戦ではタフに戦って1−0で勝利を掴んだ。終わってみれば、2勝1分の首位。海外の記者からも賞賛の声が上がるほどの出来だった。

 ただ、これだけのパフォーマンスを見せても、余力が残されていたことも見逃せない。森山監督がターンオーバーで選手のコンディションをコントロールし、選手の疲労度も最小限に留めた。代わりに出場した面々も上々のプレーで抜擢に応え、セネガル戦で先発起用された村上や山内翔(ヴィッセル神戸U-18)にも見込みが立った。筋肉系のトラブルを抱えていたキャプテンの半田陸(モンテディオ山形)をメキシコ戦で先発から外す決断ができたのも、村上の台頭があったからに他ならない。そうした活躍はチームの強化に一役買い、サブ組がモチベーションを下げなかった点もチームの士気にプラスをもたらした。

「試合に出ていない僕たちはしっかり負荷をかけるために、トレーニングとは別にホテル内のジムに通っていました。山内も出番を得て、セネガル戦で良いプレーをしましたけど、自分たちが腐らずにやれば、チーム全体の底上げになる」(村上)


 4強を目標に掲げていた"森山ジャパン"。「ベスト16にピークを持っていく」と指揮官が話していた通り、心身ともに充実した状態で16強戦に臨んだ。

 選手たちも自信を深めていたし、何よりもチームに勢いがあった。だが、序盤から特徴を発揮できず、0−2で敗北。精神的支柱の半田がスタメンから外れたこと。劣勢を跳ね返す力や修正能力……。敗因を挙げればキリはないが、少なからずゲームを難しくした、ひとつの出来事があった。試合前に襲った突然の豪雨である。
 

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