「今は負ける感覚はない」大宮期待の注目株ドリブラー、奥抜侃志が語るJ1昇格への手応え

2019年11月07日 松澤明美

得点した5試合は全勝!

柏戦で同点ゴールを決めた奥抜侃志。今季17節の京都戦でプロ入り初ゴールを記録し、ここまで5得点を挙げている。写真:田中研治

 大宮で今、最もスタジアムを沸かせる選手は奥抜侃志と言っていいだろう。
 
 応援歌の歌詞「俺たちは奥抜の虜さ」を地で行く下部組織出身のプロ2年目の背番号33番のMF。初めて取り組むシャドーの位置で、卓越したドリブラーの才能をいかんなく発揮する。

 11月2日の柏レイソル戦では全2得点に絡む活躍で、1点を追う42分にはドリブルで日本代表GK中村航輔を鮮やかにかわして同点ゴール。2分後、茨田陽生の逆転弾の起点にもなり、2-1の勝利に導いた。6日のアビスパ福岡戦は60分、パス交換からフアンマ・デルガドの先制点を演出して、こちらも3-0と快勝した。

 2戦連続の大一番でチームに勝利をもたらし、自動昇格圏の2位浮上に大きく貢献。奥抜は「日々、成長しているなって感じる。もっともっと上のレベルにいきたいですし、成長したいなと思う。現状に満足せず、もっともっと練習から強度高く取り組んでいきたい」と向上心を見せる。挑戦中のシャドーにも「最初は戸惑いもあったが、今はフアンマ選手とコミュニケーションをとって、いい関係で問題なくやれている」と自信を覗かせた。
 
 自身を"ライオン"と称する高木琢也監督が目を掛ける秘蔵っ子だ。「崖から突き落としました。ちょっと上ってきたら突き落として、突き落として、突き落として(笑)。だから今があるんじゃないですか」と、日ごろの練習から身振り手振りで熱心にアドバイスを送る。元日本代表FWの手ほどきを受けた若武者は、チームに欠かせない存在へと成長し、高木監督は「守備も頑張ってくれるし、攻撃のところも引きつける力を持っている」と信頼を寄せた。

 MFの三門雄大やDFの畑尾大翔ら先輩も、奥抜へ期待の眼差しを向けてきた。試合中も言葉掛けする三門は「いろいろと集中してやれるようになった」と太鼓判を押す。「浮き沈みの激しい選手だったが最近はなくなってきた。(高木監督のように)あれだけ言ってくれる人って、なかなかいない。期待の表われだと思う」。また、ベテランたちが指揮官同様に後輩を手塩にかけ、三門は「大好きなドリブルを大好きな場所でさせてあげるのが彼には一番いい」と、その才能の引き出し方も理解する。

 ルーキーイヤーの昨季は7試合出場で無得点だったが、今季はここまで22試合に出場して5ゴールを挙げた。しかも、奥抜が得点した5試合は全勝と勝負強い。奥抜は「(高木監督が)ボールをもらう前の動きをすごい言ってくれるので、去年にはなかった引き出し方とか成長したなって感じている。フアンマ選手に入った後の2枚目の動き出しは去年の僕にはあまりなかった。今年に入ってバリエーションが増えた。すごく大きい」と充実の表情で「高木監督に感謝しています」と語る。

 指揮官の期待を背負い、成長著しい20歳はチームへの手応えを口にし、「正直、今は負ける感覚はない。勝てる雰囲気にある。このまま波に乗っていきたい」と"J2優勝"を射程に捉えた。

取材・文●松澤明美(フリーライター)

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