【浦和シーズン総括】終盤戦に何が起きたのか?「魔のラスト3試合」を徹底分析する

2014年12月18日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

チーム内のシュート数最多が退団した原口だったという現実

最終節の名古屋戦を1-2で落とし、「再逆転優勝」のチャンスを手放した浦和。ラスト3試合で勝てなかった要因とは?(C) SOCCER DIGEST

 やや驚きのデータがある。
 
 2014年シーズン、浦和の総シュート数の1位は、原口元気の43本だった。興梠慎三と梅崎司が2位タイの42本、さらに槙野智章の41本、柏木陽介の40本と続く。夏にヘルタ・ベルリンへ移籍し、14試合しか出ていない原口が最多である。移籍する前の試合で、気合いを入れて多めにシュートを撃っていたとはいえ、彼より20試合多く戦っていた選手が届かなかったのだ。アタッカー陣の梅崎、李、柏木の1試合平均のシュート数は、1.3本前後ということになる。
 
 完全に敵陣を切り崩す理想を追求し、ゴール前まではボールを持ち運べても、シュートまで行けない。時にシュートを撃とうとする意識が希薄に感じられたが、データはそうした傾向を裏づけている。そのなかで異彩を放っていた原口が積極的にシュートを放ち、前半戦はむしろそうやって攻撃のバランスが取れていたと言えた。
 
 浦和の1試合平均のボール支配率(ポゼッション率)は57.9パーセント。昨季よりも数字を高め、2年連続リーグ1位を記録した(2位の川崎は55.3パーセント)。
 
 ボールを持ち続けて、試合の流れを崩さず時間を進め、勝負どころで攻撃のスイッチを入れる。慎重とも言える試合運びが、1-0が9回、Jリーグ記録となる7戦連続無失点、そして西川周作の16試合無失点という失点の少なさに結び付いた。
 
 シーズン前半、試合の流れを決めるスイッチ役となっていたのが原口だった。注目すべきは原口がいた間のほうが、1-0の試合が多かったという点だ。
 
 今季プレッシングの意識を高めた原口も基本的には守備に軸足を置いて試合に臨み、要所で点を取りに行く姿勢を見せた。それで上手く得点を奪えれば、また守備に軸足を置いてカウンターを狙う。試合を動かすか、あるいは落ち着かせるか、という面においてのキーマンと言えた。
 
 原口退団後の中盤戦は、李忠成と梅崎がスイッチ役を務めた。夏場は広島、清水、大宮、柏など自陣を固めて速攻を狙う相手に対し、完勝を収めている。とはいえ原口の抜けた「左シャドー」(2列目の左)のポジションの穴は埋め切れずにいた。梅崎と李がレギュラーとしてその位置に入ったものの、いずれもパンチを欠いた。なにより2人のゴール数は伸び悩んだ。
 
 そこで終盤戦、スイッチ役は関根貴大とマルシオ・リシャルデスが担う。興梠の骨折による離脱に伴い、先発は1トップに李、左シャドーに梅崎で固定されたが、"シュート不足"の傾向はむしろ強まり、辿り着いたのが関根&M・リシャルデスをセットで起用する「超攻撃的」な選択肢だった。

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