【ユースコラム】育成強化の根幹を成すリーグ戦のピラミッドは本当に機能しているか?

2014年12月17日 安藤隆人

九州以外でプリンスリーグの「2部」が廃止に。Jユースも県リーグで四苦八苦の状態。

C大阪U-18の優勝で幕を閉じた高円宮杯。プレミアリーグを頂点とする体制となって5年目を迎えたが、育成のためにさらなるリーグの整備が必要だ。(C) SOCCER DIGEST

 C大阪U-18のチャンピオンシップ制覇で幕を閉じたユース年代最高峰の高円宮杯プレミアリーグ。埼玉スタジアムでC大阪U-18が歓喜の声を挙げる一方、遠く離れた広島でも様々な悲喜こもごもがあった。チャンピオンシップの当日(本来は前日だったが、雪のため翌日に順延)と翌日に、広島では来季のプレミアリーグ昇格を懸けた参入戦が行なわれた。
 
 全国9地域のプリンスリーグ覇者、及びそれぞれの地域枠内に入った16チームが一堂に集結し、ノックダウン方式で争うサバイバルマッチ。どのチームも2勝をすればプレミアリーグへの昇格が決定するレギュレーションのなか、FC東京U-18、大宮ユース、大分U-18、履正社の4チームが勝ち名乗りを挙げた。
 
 一方で敗れた12チームは、来季も再びプリンスリーグで戦うことに。歓喜に沸く昇格組との落差はあまりに大きい。そして、さらにこの参入戦の結果に戦々恐々としていたのが、プリンスリーグの下位チームだ。所属地域のチームがプレミアリーグに昇格するかしないかで、自分たちが来年もプリンスリーグで戦えるのか、あるいは都道府県リーグに落ちなければならなくなるのか、まさに明暗がくっきりと分かれるからだ。
 
 ユース年代に詳しい方ならば知っていると思うが、かつてプリンスリーグは全国9地域すべてが1・2部構成で、その下位に都道府県リーグがあった。しかし、日本を東西に分けた全国リーグである、プレミアリーグが発足してからは、日本サッカー協会は2部リーグを廃止する方向性を示したのだ。
 
 プレミアリーグ発足当初こそ、地域によっては2部リーグが存続していたが、今年はついに九州以外の全地域が2部リーグを廃止。プリンスリーグからの降格チームは、翌シーズンは都道府県リーグを戦うことになった。
 
 現場の指導者からは、プレミアからプリンスはまだしも、プリンスから県リーグへの降格は、ダメージが大きいという声が聞かれる。今年、一番の激戦区だったプリンス関東では、浦和ユースと横浜ユースが降格の危機に瀕していた。トップチームが名門のこの2チームは、これまで多くの優秀な人材を輩出してきた。現在でも年代別代表に数人の選手が名を連ねるなど、Jユースの中でも有数の実力を誇るチームだ。もし、これらのチームが来季県リーグに落ちたら、育成面での影響は決して小さくないだろう。
 
 もちろん、それだけの戦力があるのだから、降格寸前まで手を打てなかった方が悪いという意見もあるだろう。だが、チームは水物で、調子のいいシーズンもあれば、悪いシーズンもある。悪いシーズンにはまり、県リーグ降格の憂き目に遭ってしまったら、当然翌年は対戦相手のレベルも著しく下がり、日本サッカー協会が唱える『リーグ戦を通じての強化』ができなくなってしまう。もちろんこれはJユースに限らず、各地域の強豪高校にも当てはまる。

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