【FC東京|担当記者コラム】鳥栖に逆転負けした時はどうなることかと思ったが

2019年11月03日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

大分戦で印象的だった守備の組織美

チームとしての一体感があるFC東京。クラブ史上初のリーグ優勝を果たせるか。写真:徳原隆元


「勝負弱い」と言われることが少なくなく、実際、昨季も夏場以降に大失速した。だから、今季はどこかで調子を大きく崩すかもしれないとも思っていたが、最終盤戦まで優勝争いに絡んでいる。

 敵地で2-0の勝利を飾った大分戦をひと言で表現するなら、「完勝」だった。5分に相手のミスを見逃さなかった永井が首尾よく先制点を奪うと、その2分後には三田のコーナーキックから渡辺がヘッドで追加点。「移動に5時間以上」(長谷川監督)というハンデも関係なく、FC東京が10分も経たないうちに大分に大きな傷を与えた格好だった。

 勝因のひとつは大分のビルドアップを封じた点にあるだろう。大分のGK高木、3バックに半端ないプレッシングで圧力をかけた永井とD・オリヴェイラが殊勲者で、FC東京の守備を安定させた意味でも、このふたりの貢献は大きかった。

 もっとも、前線からのプレスが凄いからといって、それだけで勝てるわけではない。前線のプレスに連動した形で、中盤の4人がパスコースを防ぎ、それでも漏れてきたボールを最終ラインの4人がしっかりとブロックする。GK林の仕事がほとんどなかった前半の守備はパーフェクトで、大分に付け入る隙を与えなかった。

 「後半は少しパワーダウンした」と森重が言うように、試合終盤は大分に押し込まれる時間帯もあったが、FC東京の守備ブロックが崩れる気配はほとんどなかった。サイドからクロスを放り込まれても、森重と渡辺の両CBを中心に弾き返す。結局最後はゴール前にボールが運ばれてくるのだから、そこで潰せばいいというような、割り切ったディフェンスで結果的に大分の攻撃を防ぎ切った。

 2トップの頑張りは確かに素晴らしかったが、大分戦で印象に残ったのはチームとしての組織美。「ブレない指揮官」(東)長谷川監督の下で、ファストブレイクが基盤のサッカーで大分を圧倒したところが素晴らしかった。
 
 鳥栖に逆転負けした時とはどうなることかと思ったが、続く神戸戦でも持ち前の速攻から得点を重ねるなど今季のFC東京は立ち直りが早い。いずれにしても、立ち返れる場所(ファストブレイクが基盤のサッカー)があるのは重要だ。

 東が「恋しいです」という味スタにも、次節の磐田戦(この試合も重要)が終われば戻れる。その味スタではこれまで以上のファン・サポーターが待っていて、監督、選手に大きなパワーを与えてくれるかもしれない。ここまでの流れを壊さない意味でも、磐田戦では勝点3を獲得したい。

 サブメンバーがなかなか結果を出せないという懸念は正直ある。神戸戦でスーパーミドルを決めたアルトゥール・シルバはさて置き、田川や大森などはこのところゴールに絡めていない。あと1回の警告で出場停止になる選手(D・オリヴェイラなど)もいるが、びびる必要はないだろう。

 明らかに変わったのはチームを取り巻く雰囲気。失速するかも、から、優勝するかも、いや、優勝しそう、というふうに変わってきたのは紛れもない事実だ。

取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)
 
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