【天皇杯】狙うはJ1首位の鹿島斬り!社業との両立でアマ最強軍団Honda FCを支える26歳ボランチの人間力

2019年10月22日 松澤明美

「入って来たときは『使えるのかな?』という選手。今ではうちの縁の下の力持ち」

Honda FCのボランチ松本。4回戦の浦和戦では、高校時代以来となる埼スタで躍動し、チームを8強入りに導いた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 アマチュア最強が前回王者を撃破した。9月25日の天皇杯全日本サッカー選手権4回戦で、JFLのHonda FC(静岡県代表)が浦和レッズ(J1)に2−0で完勝。4部相当のチームが徳島ヴォルティス(J2)、北海道コンサドーレ札幌(J1)、浦和とJクラブを破って、12大会ぶりの準々決勝に進出。快挙を心臓部で支えたのはボランチで26歳の松本和樹だ。

「懐かしい」−−。


 浦和戦に向かうバスから見える埼玉スタジアム2002に松本は胸を躍らせた。そこは、埼玉の西武台高校3年次にキャプテンとしてチームをまとめ、ベスト8入りした全国高校サッカー選手権2回戦の舞台。思い出の地は選手権以来で、松本は「テンションが上がった」と目を輝かせた。

 いざ、ピッチに立つと、浦和の声援の凄さに驚いた。JFL3連覇中のHonda FCでも味わうことのない熱量。だが、気圧されるどころか「特別な感じでした」と松本。力に変えてチームを舵取りし、バランスを取り続けた。危機察知能力の高さを随所で見せ、細かく指示を出しながら浦和に付け入る隙を与えず。得点、アシストと数字に表われないところでしっかりとチームの勝利に貢献した。

 Honda FCの井幡博康監督は松本のプレーについて、「下手くそですね(笑)」と第一声。「ただ、入ってきた時は『使えるのかな?』という選手だったんですが、積み重ねていく中で、しっかりと自分の役割、長所、短所を理解して、チームのために働ける黒子という部分では貴重な選手。彼も理解してやっているので、今はうちの縁の下の力持ち。非常に評価できる選手」とねぎらった。

 松本は「うれしいですね」と喜び、「慢心しないようにしないと」とすぐに引き締める。国士舘大を卒業後、Honda FC入りして今年で5年目を迎え「このチームに入って足下とかポジショニングとかを本当に細かく言われた。そこが染み付いてきてチーム、個人としても成長できているんじゃないか」と充実の表情。「チームの中心としてやらなきゃいけないなって自覚もある」と頼もしさは日に日に増すばかりだ。

 サッカーを生業とするプロを3連破した猛者は、仕事とサッカーを両立させる。ホンダのギア加工モジュール部門に所属し、「部品を作っています。ミッションのギア担当」と松本。火、水、木曜日の朝8時から昼12時まで働き、その後に練習に励み、金曜日は午前からトレーニング。週末はJFLの試合があるため、月曜日休みとなる。仕事は手を使う作業で、「午前中はハンドしています(笑)。本当にいい環境でやらせてもらっているなって感謝の気持ちです」。
 

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