台頭する地元出身のヤングスターが武藤嘉紀の立場を危うく!? 英国人記者が見るニューカッスルの現状【現地発】

2019年10月22日 スティーブ・マッケンジー

評価を高める生え抜きの19歳

今シーズンは出場機会が減っている武藤(中央)。M・ロングスタッフ(右端)の台頭でさらに序列は……。 (C) Getty Images

 去る10月6日、イングランド・サッカー界最大のニュースは、ニューカッスル・ユナイテッドがマンチェスター・ユナイテッドに1-0で勝利したことにあった。

 その結果もさることながらり人々の脳裏に強烈なインパクトを残したのは、72分に値千金の決勝弾を決めたニューカッスルのマシュー・ロングスタッフだ。19歳の若武者は、クラブのプレミアリーグ最年少得点者となり、華々しいデビューを飾ったのだった。

 地元タインウェアの出身の新星は、幼少期からマグパイズ(ニューカッスルの愛称)に心血を注いできた筋金入りのファンであり、2歳年上の兄ショーンとともにこのクラブの下部組織から育ってきた。

 そんな古豪が生んだ俊英MFの躍動にイングランドの人々は魅了されている。というのも、昨今、大枚を叩いて国外から連れてくる外国人選手の多くが、対価に見合うだけの結果を残していない傾向にあるからだ。

 そうしたなかで、クラブのために純粋にフットボールを謳歌しているM・ロングスタッフの姿は、新たな息吹を吹き込んでいるように見えるのだ。

 さらに、不平不満を外にこぼさない点も評価を上げている。

 彼は、試合中に良いポジションで味方からボールを受けられなかったとしても、チームメイトに怒りや不満をぶつけない。試合後の振る舞いでも同様である。時に自分の意見を主張することも大事ではあるが、個人的には、そうした謙虚な態度は、成長のためにも良い方向に働くと見ている。

 当然、ファンからの信望も厚い。現地時間10月19日に行なわれたチェルシーとのアウェー戦では、敵地に駆け付けたニューカッスル・サポーターから「あなたは俺たちの仲間だ」というチャントを送られた。

 声価を高めるヤングスターの存在は、日本の皆さんが気に掛けている武藤嘉紀にとっては、あまり良い知らせではないかもしれない。

 時には攻撃的MFの役割も務めるM・ロングスタッフの台頭は、すなわち日本代表FWの序列を下げるということを意味している。事実、途中交代となった第7節のレスター戦以降、武藤は2試合連続でベンチ外を余儀なくされている。

 しかし、この先も武藤にチャンスは与えられるはずだ。なぜなら、降格圏の18位と低迷しているニューカッスルは、いまだ攻撃陣の最適な組み合わせが固まっていないためだ。

 たしかに、武藤は監督批判とも取れるコメントを残して物議を醸したが、その能力に疑いの余地はない。我々は昨シーズンのユナイテッドで決めた鮮烈な一撃を忘れてはいない。

 だが、やがて訪れるであろうチャンスを与えられた時に、ユナイテッド戦で魅せたような鮮烈な輝きを放てなければ、彼は路頭に迷ってしまうかもしれない。

取材・文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)

スティーブ・マッケンジー (STEVE MACKENZIE)
profile/1968年6月7日にロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでのプレー経験があり、とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からサポーターになった。また、スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国の大学で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝に輝く。

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