森保ジャパンの「ボランチ」の選択肢を探る。主軸・柴崎岳のパートナー選びの行方は?

2019年10月11日 加部 究

ポジション争いは試合に出ていない欧州組がJリーガーのレギュラーを押し退ける構図も

W杯アジア2次予選では、柴崎を軸に橋本と遠藤が起用されている。写真:サッカーダイジェスト

 森保一監督は、常々「次の試合でレギュラーが保証されている選手はひとりもいない」と強調する。世界中の多くの監督が選手たちのモチベーションを高めるために使ってきて、たっぷりと手垢のついた表現だ。しかし日本代表監督の言葉と現実は、なかなか符合せず、あまり説得力を持たない。とりわけ疑問符がつくのがボランチの人選である。


 森保監督は就任してから、完全にボランチの軸を柴崎で固定してきた。コパ・アメリカでも3戦全てをフル出場させているから、東京五輪のオーバーエイジ起用も有力視されている。確かに日本代表での柴崎のパフォーマンスは際立っているし、ほとんど期待を裏切ったことがないから妥当な人選ではあるが、反面指揮官は必ずしもコンディション優先で競争を促しているわけでもない。ヘタフェに所属していた柴崎は、ロシア・ワールドカップ終了後のシーズンを通して7試合しかプレーしていなかった。今回もいくつかのポジションでは、試合に出ていない欧州組が、Jリーガーのレギュラー選手たちを押し退けている。要するに、あまり「フェアな競争」と建て前を繰り返しても意味を成さないわけで、堂々と自分の眼鏡に適った選手と言い切った方が潔い。

 今回のモンゴル戦も、柴崎のパートナーに選んだのは、シュツッツガルトで出場機会を得られていない遠藤航だった。移籍して出場機会のない選手が劇的にコンディションの良化をアピール出来るはずがないので、純粋に指揮官の期待を込めての抜擢である。
 
 最近の代表戦で、柴崎のパートナーとして使われて来たのは、球際に強くボール奪取に長け推進力のある橋本拳人だった。柴崎もプロ転向後は、着実に守備面での成長を見せている。とりわけ危機を読み切る状況察知に優れ、重要な局面で身体を張ってピンチを凌ぐシーンも目立っている。しかし当然長所は、起点となり局面を変えたり、ゴールに直結するようなパスを送ったりする攻撃的な資質なので、指揮官も対照的な能力を備えた橋本とのコンビを選択してきた。

 だが今回実力差の大きなモンゴル戦では、ボール奪取に気を遣う局面は限定され、むしろボランチにも攻撃的な展開やゴール前への飛び出しが優先された。そういう意味で遠藤という選択は妥当だった。実際広範に動いて気持ち良く攻撃に絡み、代表初ゴールを決め、終盤には強烈なミドルシュートから鎌田大地の6点目を導いた。遠藤への期待値が高いのは、こうして敢えて日本代表で試合機会を設け、救いの手を差し伸べた親心からも窺える。
 

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