「冗談のようなゴール」スアレスの美弾を演出したテア・シュテーゲンの“キャリア初”アシストはこうして生まれた【現地発】

2019年10月01日 エル・パイス紙

バルサのGKでは今世紀初

守備ではクリーンシートを達成し、攻撃では先制点をアシスト。まさにテア・シュテーゲンの独壇場だった。(C)Getty Images

 それは何でもないロングボールだった。

 しかし今シーズン開幕以来、守備の不安定さが際立つバルセロナにとって、DFの背後に抜けるボールは即失点に繋がりかねない。実際、完全に虚を突かれたCBのクレマン・ラングレは背走を余儀なくされ、その視線の先にはアンヘル・ロドリゲスがシュート態勢に入っていた。その瞬間だった。

 判断良くペナルティエリア外に飛び出したテア・シュテーゲンが胸でボールをコントロールすると、今度はアンヘルに連動してラインを押し上げていたヘタフェのDFラインの背後を狙って長距離のパスを送り込んだのだ。
 
 最初は単純なクリアだと思われたそのボールはがら空きになったスペースに走り込んだルイス・スアレスの動きと見事にシンクロ。相手GKダビド・ソリアの反応が一瞬遅れたことも手伝い、スアレスは柔らかなタッチでボールを浮かせ、絶妙なループシュートを決めてみせた。テア・シュテーゲンにとってはキャリア初、バルサのGKでは今世紀初のアシストだった。

「ルイスの動きは見えていたけど、あそこまでうまくいくとはね。それだけ彼の動き出しのタイミングがパーフェクトだったんだ。ハーフタイムに(GKコーチの)ホセ(ラモン・デ・ラ・フエンテ)に『俺のキャリアに足りなかったアシストを決めたぜ」って言ってやったんだ」

 試合後、テア・シュテーゲンは声を弾ませた。

 一方、ヘタフェの中盤の要のマウロ・アランバリは落胆の色を隠せなかった。

「こういうことは時に起こる。いけると判断すれば、積極的にラインを押し上げるのが俺たちのスタイルでもあるからね。確かに裏のスペースのケアが十分ではなかった。でもミスは誰もが犯すものだ」

 それまで試合は完全にヘタフェのホセ・ボルダラス監督が思い描いた通りの展開で進んでいた。長い芝にも妨げられ、パススピードは一向に上がらず、バルサの選手たちはボールを受けるたびに一考してから次のアクションに移行している印象すらあった。スアレス、アントワーヌ・グリエーズマンら自慢の攻撃陣も、「4+4」の2ラインでがっちり中央を固める相手の守備ブロックを前に完全に沈黙させられた。

 仕方なくフリーのジュニオル・フィルポにボールを預けるも、ジョルディ・アルバの怪我により左SBで先発起用されたニューフェイスは球離れが遅く、バックパスを連発。ナーバスになったジュニオルはファールを繰り返すという悪循環で、40分を迎えた時点でチームが犯した7つの反則のうち6つが彼によるものだった。
 

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