【連載】ミラン番記者の現地発・本田圭佑「昨シーズンの本田こそ“出来の悪いコピー”だった」

2014年12月03日 マルコ・パソット

交代で下がる10番にオベーションが贈られた。

先発に復帰した13節のウディネーゼ戦。サポーターは大歓声で本田を迎えた。 (C) Getty Images

 イタリアの老舗スポーツ紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のミラン番マルコ・パソット記者が、本田圭佑とミランを綴る連載コラム。毎週水曜日、とっておきの情報を現地直送でお届けしています。
 
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 本当の本田をミランで見ることができるのは、半年後の来シーズンからだ――。
 
 昨シーズン、なかなか活躍できない本田に対し、そう主張していた人たちの見解が、結局、正しかった。イタリア・サッカーのリズムに、練習に、試合に慣れると、本田は自らを獲得したミランの正当性を難なく証明してみせた。
 
 本田のことを大失敗だとか、未確認物体だとか、単なるジャパンマネーを呼び寄せるための餌にすぎない(実際多くのスポンサーをもたらしたことは確かだが)などと非難してきた人々も、いまでは彼の実力を認めざるを得ないだろう。
 
 本田に対するメディアの評価も、日を追うごとに上昇している。新聞もテレビも、いまでは賛辞を惜しまない。それも当然だ。8月の半ばから10月の半ばまで、本田はミランのシンボル的存在だった。
 
 日本人選手がミランのシンボルだなんて――と思う輩もいるかもしれないが、本田が決めたゴールの数々は、好スタートを切ったミランの原動力であり、直近のウディネーゼ戦で2ゴールを決めたメネーズに抜かれるまで、本田はチームの得点王でもあったのだ。
 
 いまやピッポ・インザーギのミランになくてはならない存在であることは、火を見るより明らかだ。こうしたピッチでの頑張りが、辛口で知られるイタリア・メディアさえも動かしたのだ。以前は攻撃の的だったインタビュー嫌いも、口先ではなくプレーに語らせる真のプロフェッショナルだといった称賛に変わるなど、メディアの態度はそれこそ180度変化している。
 
 まあ、報道する側としては多少なりとも話してくれないと困るのだが、とにかく本田の言動のすべてが好意的に受け取られるようになったのは確かだ。
 
 主役にはなれなかったデルビー(ミラノ・ダービー)から1週間、本田はウディネーゼ戦で先発に復帰、エル・シャーラウィ、メネーズと攻撃のメンツも揃った。試合前、ミランのスタメンが読み上げられ、スタジアムのスクリーンに本田の顔が大きく映し出されると、サポーターの歓声はひと際大きくなった。これも昨シーズンには絶対に見られなかった光景だ。
 
 本田はミラニスタたちの心も掴みつつある。ウディネーゼ戦でも、たしかに本田は主役のひとりだった。前半にはメネーズ、そしてボネーラのアシストから2本のシュートを放った。得点には至らなかったものの、しかし彼の心は決して折れず、その後も果敢に相手ゴールに迫った結果が、ミランに先制点をもたらしたPKだ。
 
 その後、エッシェンの退場に伴い、本田はポーリとの交代で81分にベンチに下げられた。とはいえ、試合を通じての本田のパフォーマンスは素晴らしかった。第四審判が掲げる電光掲示板に「10番」が表示されると、ミラニスタたちは本田にオベーションを贈った。その働きに十分満足した証拠である。
 
 前回のコラムでも言及したが、本田が不在となる1月のミランが心配だ。日本代表としてアジアカップに出場するため、本田は12月20日の16節ローマ戦を最後にチームを離れ、その後少なくとも1月の末までミラネッロ(ミランのトレーニング施設)を留守にする。
 
 本田をチームの大黒柱のひとりと考えているインザーギにとっては、頭の痛い問題だ。ミラニスタの間でも不安が高まっており、ソーシャルメディア上では本田の不在をカバーするための選手を1月のメルカート(移籍マーケット)で獲得するのでは、などという憶測が飛び交っている。

次ページクラブOBの本田評も好意的に変化。

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