快進撃は39歳ベテランの抜け目なさに止められたが…ジャイキリ連発の法政大、なぜ天皇杯で躍進できたのか?

2019年09月19日 大島和人

「リスタートとなった瞬間に、法政の近くにいた選手が3人くらいボールを見てなかった」

法政大は先制を許すも、77分に森俊貴のゴールで同点に追いつく。延長戦で敗れたが、その戦いぶりは称賛に値するものだ。写真:徳原隆元

 第99回大会は、Jリーグが1993年に開幕してから27回目の天皇杯だ。大学勢が記録した最高成績はベスト16で、今大会の法政大や97回大会の筑波大を含めて7例ある。しかしベスト8進出はまだ1校もなかった。

 法政はヴァンフォーレ甲府に挑戦した18日のラウンド16で、快挙の一歩手前に迫った。27分に先制されたが、後半は敵陣に押し込む展開が続き、77分に途中出場の森俊貴が同点弾を決める。1-1で延長戦に突入する時点では、体力的にも相手より「残っている」ように見えた。


 しかし延長開始直後の93分、法政はピンチを迎える。山本英臣のクイックリスタートから佐藤洸一がボールを収めてチャンスメイク。宮崎純真にミドルを打ち込まれ、それが甲府の決勝点となった。120分を戦い抜いた末の、1-2の惜敗だった。

 昨年まで甲府のキャプテンを10シーズン連続で務めていた山本は、決勝点の場面をこう振り返っていた。
「リスタートとなった瞬間に、法政の近くにいた選手が3人くらいボールを見てなかった。ウチも2人見ていなかった。若くて速い選手が行ってほしかったんですけれど、彼は見ていなかった。ただペナルティエリアの中で、佐藤洸一だけが気づいて入ってくれた」

 39歳の山本、32歳の佐藤には、経験に裏打ちされた嗅覚がある。甲府が上回ったのは、抜け目のないベテランの力だった。
 
 とはいえ若者たちは甲府と同じ土俵で戦っていた。甲府は5-4-1の布陣でスペースを空けず、DFの背後やサイドへのロングボールを生かした慎重な試合運びに徹していた。シュートの本数も法政の9本に対して、甲府は7本。何も知らない人が見れば、法政が格上に見えたかもしれない。

 東京ヴェルディ、ガンバ大阪をいずれも0-2で下したチームを侮れるはずもない。甲府はリーグ戦からの入れ替えこそあったが、大学生を「リスペクト」した戦いに徹した。

 山本は大学チームをこう称賛する。
「ああいうところでしか勝負はつけられない。法政はそれくらい素晴らしいチームだった。球際でファイトしてくるし、ボールを持っている時も持っていない時も自信を持ってプレーしてくる。一人が裏を走ったら一人が降りてとか、ボールを蹴れる選手がボールを持ったら裏に走るといった共通認識(のレベル)も高かった」
 

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