【FC東京】鹿島の“伝統の力”に呑み込まれてしまうのか。それとも…

2019年09月15日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

鹿島に黒星も慌てるタイミングではない

鹿島戦でいくつか決定機に絡んだ永井。今後も重要なキーマンだ。徳原隆元

 2019年9月15日、首位のFC東京が2位の鹿島に0-2と敗戦。開始2分にいきなりCKからブエノにヘッドを叩き込まれると、その後の反撃も実らず、78分にはセルジーニョにミドルを決められて完封負けを喫してしまった。
 
 これで、鹿島に勝点1差に迫られた。しかし、試合後に話を聞いた東、髙萩などは「鹿島戦の内容は良かった」とポジティブに捉えており、彼らに悲壮感は微塵も感じられなかった。
 
 確かにFC東京のパフォーマンスは悪くなかった。鹿島に主導権を握られたように見えた前半こそ低調だったが、後半は永井や室屋、東を軸にチャンスを作り、ゴールまであと一歩のところまで迫った。開始直後の失点を引きずらず、鹿島に冷や汗をかかせた戦いぶりはポジティブな側面もあるだろう。
 
 久保が移籍で抜けたあとのFC東京は、後半に巻き返す傾向が強い。なかでも、2トップの一角を担う永井がチャンスメーカーとして機能している時はゴールの匂いが増す。鹿島戦も決定機を迎える際は、だいたいこのスピードスターが絡んでいた。持ち前のスピードを主武器に攻め込む永井のアグレッシブさは、おそらく鹿島の脅威になっていただろう。
 
 とはいえ、負けは負け。勝っていれば鹿島に勝点7差をつけて、いよいよ独走態勢かという状況を作れていたかもしれないが、逆に勝点1差になってしまったのだ。しかも、同日に広島を下した3位・横浜との勝点差も4に縮まった。いよいよ苦しくなってきたかとネガティブに捉えられても致し方ないだろう。
 
 なにしろ、真後ろまで迫ってきているのが20冠の鹿島なのだ。リーグ優勝未経験のFC東京が彼らの"伝統の力"に呑み込まれてしまうと、そう危惧するほうがむしろ当然かもしれない。
 
 簡単には頂点に辿り着けない。それを思い知らされたのが鹿島戦だが、ただ、この痺れるシチュエーションで優勝争いを演じていることこそFC東京にとっては大きな経験だ。肝心なところで勝てず「勝負弱い」と言われ続けてきた青赤軍団が今季はここまで堂々と首位戦線をリードしている。26節まで積み上げてきた勝点が鹿島戦の黒星でなくなるわけではないし、なにより、まだ首位に立っているのだ。
 
 まだ慌てるようなタイミングではない。長谷川監督の下、これまで実践してきた"ファストブレイク"を信じ、最後まで貫けるか。FC東京が優勝できるかは、ライバルチーム云々ではなく「自分たちがどうか」(東)だろう。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)
 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事