【鹿島】試合前のロッカールーム、内田篤人はどんな言葉でチームを鼓舞したのか?

2019年09月15日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

苦しい時も耐えて、止めを刺す。そんな展開も予言?

首位FC東京との大一番を制した鹿島。内田は「最近、特にホームでの戦い方は“熟して”きている気がする」と印象を語った。写真:徳原隆元

[J1リーグ第26節]鹿島2-0FC東京/9月14日/カシマ
 
 キックオフ前のロッカールームでの円陣。内田篤人は「しゃべるか?」と三竿健斗に確認すると、「いや、篤人さん、お願いします」と返されたという。
 
 勝点4差で首位に立つFC東京との大一番。腕章を巻いて先発する三竿に対し、内田なりの気遣いを見せたのだろう。三竿がそれを辞退したのは、内田が発する言葉の重みを承知していたからかもしれない。
 
 内田のメッセージは、ある意味、この試合を予言するものだった。
 
「こういう大事な試合だからって、120パーセントは出ないよ。今回、練習は1週間弱しかなかったけど、準備してきたものを出すしかない。だから、いつも通りやろう。みんなで苦しい時はゼロで抑えて、行けそうだなと思ったら、勇気を出していこうよ」
 
 開始早々にレオ・シルバのCKからブエノがヘディングシュートを叩き込み、幸先良く先制に成功する。1-0で迎えた後半は、攻撃の強度を上げたFC東京に攻め込まれて劣勢の時間帯が増えたが、チーム全員で懸命に守って失点を許さない。徐々に盛り返せるようになると、点を取りに行く姿勢を見せ、セルジーニョの鮮やかなミドルで止めを刺す。
 
 まさに"みんなで苦しい時はゼロで抑えて、行けそうだなと思ったら勇気を出していく"展開で、鹿島は大きな勝点3を手中に収めた。
 
 内田はまた、こんなことも言って選手たちを送り出した。豊富な経験を持つ内田の言葉だからこそ、説得力があったはずだ。
 
「いつも通りやろう、いつも通りに勝とう。大事な時こそ平常心。ワールドカップでも、チャンピオンズリーグでもそうだから」
 
 いつも通りに勝つ――そう言える選手がいる。それを体現できる仲間たちがいる。これまで20ものタイトルを積み上げてきた常勝軍団だからこそ、なせる"芸当"だろう。
 
 この日は出番のなかった内田が、鹿島というクラブを誇りに思いながら、チームメイトの奮闘を労う。
 
「本当に、選手たちの頑張り……選手たちの頑張りって、俺、何様の立場だよって思われるかもしれないけど、今日の試合で選ばれた(スタメンの)11人、俺も含めて(ベンチメンバーも加えた)18人が頑張った。これだけ(選手の)入れ替わりがあっても、"良い質"で戦えている。それはフロントがしっかりしているから」
 
 難敵相手に、底力を見せつける完勝劇だった。もっとも、内田は「まだ試合があるし、別に俺らが首位に立ったわけでもない」と表情を引き締める。
 
 試合前、昨季に引退した鹿島の"レジェンド"小笠原満男に今節のFC東京戦の重要度について聞けば「ただの1試合だから」と諭された。脈々と受け継がれている勝者の流儀。「大事な試合だからどうこうっていうのではなくて、いつも通りに、普通に試合をして、普通に勝って帰ろうっていう感じ」(内田)。タイトルを獲るチームとはこういうものだと、改めて思い知らされる一戦だった。
 
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

【鹿島 PHOTO】ホームで快勝した鹿島。首位FC東京との勝ち点差はついに1

 
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