近視眼的な勝利至上主義が嘆かわしい 【マンC番記者】

2014年11月27日 スチュアート・ブレナン

スケープゴートを探したくなる気持ちも分かるが。

このトゥーレ・ヤヤなど本領を発揮できていない選手の不調が、ここ最近の躓きの要因。ペレグリーニの解任論は的外れだと、ブレナン記者。 (C) Getty Images

 マンチェスター・シティは、本当に危機的状況に陥っているのか。たしかに、チャンピオンズ・リーグを含めた直近6試合は3勝1分け2敗だ。しかし、1年前を振り返ってみよう。12節終了時点で、昨シーズンは7勝1分け4敗の勝点22、今シーズンは7勝3分け2敗の勝点24。優勝した昨シーズンよりも良い成績なのだ。
 
 もっとも、楽観できる状況ではないことは確かだ。怪我で戦列を離れているダビド・シルバの状態は気になるし、攻守の要であるトゥーレ・ヤヤの低調なパフォーマンスは心配の種だ。この2人がベストの状態でピッチに立っているのといないのとでは、とくに攻撃面で雲泥の差がある。
 
 セルヒオ・アグエロの好調が心強いとはいえ、前線も心許ない。怪我から復帰したステベン・ヨベティッチと入れ替わるように、エディン・ゼコが故障離脱を余儀なくされた。ひょっとすると年内の復帰が難しいかもしれない。
 
 気がかりなのは、守備陣も同じだ。CBのエリアキム・マンガラと守備的MFのフェルナンドの新戦力はまだチームにフィットしておらず、即戦力のはずだったバカリ・サーニャは期待外れ。左サイドバックのガエル・クリシとアレクサンダル・コラロフは揃って精彩を欠き、時に目を覆いたくなるほどだ。カウンターを食らい、失点がかさんでいるのは、守備陣にこうした誤算が続出しているためだ。
 
 波に乗り切れないチームにイライラを募らせるファンが、スケープゴートを探したくなる気持ちは分かる。とはいえ、マヌエル・ペレグリーニ監督に矛先を向けるのはお門違いだ。4-4-2システムは時代遅れで、もはやヨーロッパでは通用しない。解任すべきだ、などという批判は、的外れも甚だしい。
 
 シティがペレグリーニの下、プレミアリーグとリーグカップの2冠を制したのは昨シーズンだ。しかも、全公式戦を通じて156得点を記録した。1年間でここまでゴールを量産したイングランドのチームは過去にない。
 
 ペレグリーニの解任など、もってのほか。私に言わせれば、道理を無視した乱暴な意見だ。嘆かわしいのは、ほんのちょっとの躓きも許さない、近視眼的勝利至上主義が横行するイングランドのそんな土壌だ。
 
 シティの問題はシステムではない。ましてや、監督の力量不足でもない。不調の最大の要因は、選手が実力を発揮していないだけ。そう、単純な話だ。
 
【記者】
Stuart BRENNAN|Manchester Evening News
スチュアート・ブレナン/マンチェスター・イブニング・ニュース
マンチェスターの地元紙『マンチェスター・イブニング・ニュース』のフットボール記者で、2009年から番記者としてシティに密着。それまではユナイテッドを担当し、両クラブの事情に精通する。
【翻訳】
松澤浩三
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