【広島】川辺駿のシャドー起用が、“特に後半から”効果的な理由

2019年09月01日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

FC東京戦と磐田戦でゴールに絡む。

ボランチが主戦場の川辺は、シャドーでも素晴らしいプレーを見せている。写真●徳原隆元

[J1リーグ25節]磐田 0-2 広島/8月31日/ヤマハ
 
 暑さの苦しい8月、広島の典型的な選手起用法が、シャドーの一角と青山敏弘を交代し、ボランチの川辺駿を一列前に上げる采配だ。これが、実に効果を発揮している。
 
 23節のFC東京戦、例のごとく57分に東俊希と青山が交代すると、川辺がシャドーに移る。すると61分、川辺は左サイド深い位置で柏好文からボールを引き出し、相手を引きつけてからリターン。柏が鋭いショットをニアに突き刺し、首位チームを沈める決勝点に絡んだ。
 
 25節の磐田戦では、前半アディショナルタイムに森島司の負傷交代によって、青山がピッチへ入り、川辺がいつものようにシャドーに上がる。すると後半開始早々の47分、川辺はレアンドロ・ペレイラのスルーパスに反応して右サイドを抜け出し、相手DFを食いつかせてから東に預ける。ボールはL・ペレイラに戻り、最後はブラジル人助っ人がシュートを決めて先制点の起点になった。
 磐田戦後、川辺がこんなことを言っていた。
 
「前半はチームとして守備の時間が長かったので、だいぶ苦しかったですけど、そこをゼロで耐えたおかげで、後半に一列前に上がって、シャドーに入って間で受けることができました。チャンスにも絡めたので良かったと思います。
 
 試合開始(直後)のインテンシティ的にボランチだったら守備もやらなければならないですけど、後半は時間が経つごとに間で受けられますし、自分の攻撃のクオリティも出せます。
 
 チャンスに絡むのは重要だと思いますし、シャドーのタイプ的にチャンスに絡んだり作ったりする方だと思うので、その点は毎試合シャドーに上がったら意識しています」
 
 川辺のシャドーが効果的な理由は、本人が言う相手DFの「間で受けること」を意識しているからだろう。例えば他にシャドーを務める森島や東、野津田岳人などは特にキックに自信があるため足もとでパスを受ける傾向があるが、川辺は敵陣深い位置の相手にとって嫌なスペースでボールを引き出すのが絶妙に上手い。
 
 実際、24節で対戦したG大阪のアンカー・矢島慎也は「駿が前に出てきて間に入ってくるのも結構、嫌でした」と口にしていた。暑さの苦しい夏は、特に足が止まりやすい後半に、川辺の前線での動きが敵への良いジャブになっているかもしれない。
 
 もっとも、川辺が前線で好プレーをできるのは、インテンシティの高い前半にシャドーでチームに貢献している東や森島、縦パスを供給できる青山の存在があるおかげとも言える。いずれにせよ、川辺のシャドー起用はひとつのオプションとして武器になっているのは間違いないだろう。
 
取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
 
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