「数週間前からムードが…」ノースロンドン・ダービーは何が凄いのか? 英国人記者が日本のダービーマッチと比較

2019年09月01日 スティーブ・マッケンジー

日本のダービーに抱いた感想は?

普段以上の熱狂度となるノースロンドン・ダービーはイングランドでも屈指の激しいバトルが繰り広げられる。 (C) Getty Images

 8月26日(現地時間)、私はトッテナムがニューカッスルにウノ・ゼロ(0-1)で惜敗した一戦を見に彼らの本拠地に足を運んだ。

 無論、ホームのスパーズ・サポーターは、ニューカッスルに足をすくわれた結果に満足していなかった。もっとも、それ以上に彼らが危惧していたのは、翌週の日曜日に行なわれるノースロンドン・ダービーを前に敗れてしまったことにあった。絶対に負けられないアーセナルとの一戦を前に弾みをつけておきたかったのだ。

 ノースロンドン・ダービーは、近年に両チームの力が拮抗してきたことで、盛り上がりを見せているとはいえ、世界で最も有名なダービーかと言われれば、決してそうではない。単なるローカルマッチの一つだ。だが、ロンドンの北部に住む人々にとっては、長年いがみ合ってきたライバルとの、世界一にして、シーズンのなかで最も重要度の高い試合である。

 私も何度かスタジアムで試合を見たことがあるが、この試合に対する彼らの力の入り方は、他のプレミアリーグのそれとは一線を画す。

 試合に向けたムードは、数週間前からスーパーや仕事場など街のいたるところで高まりを見せ、試合当日にいたってはスタジアム周辺のあらゆる場所でノイズが飛び交う。それは、もはや応援ではなく、各々の心の叫びに近いものがあり、「あいつらなんかに絶対に負けられない」と意気込むファンの緊張感がほとばしるのだ。

 日本のダービーと比較した場合、どうだろうか。私は今年の7月に日本に行った際に、FC東京と川崎フロンターレによる"多摩川クラシコ"を見る機会があった。

 この2チームが強烈なライバル関係であることは知っていたし、当時は互いの順位が1位と4位だったこともあり、ビッグゲームだったのは間違いない。結果的に3-0でアウェーの川崎が勝利したこともあったのだろうが、このダービーに対する個人的な感想としては、スタジアムの雰囲気や試合の展開がノースロンドンのそれとは大きく異なっていたということだった。

 ノースロンドン・ダービーは常にハイペースで展開され、ファンはハードタックルとスペクタクルな攻撃を求める。一方の多摩川クラシコは、非常に落ち着いたペースで進み、選手やスタッフ、そしてファンの感情もコントロールされている。私は、「こんなにもクリーンなダービーもあるのだな」と感銘を受けたほどだった。

 何はともあれ、日本の皆さんにも、9月1日(現地時間)に行なわれるノースロンドン・ダービーをぜひ、見てみて欲しい。非常に情熱的かつ党派的な群衆の前で繰り広げられる戦いは、イングランドでも屈指の激しさとなる。

取材・文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)

スティーブ・マッケンジー (STEVE MACKENZIE)
profile/1968年6月7日にロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでのプレー経験があり、とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からサポーターになった。また、スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国の大学で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝に輝く。

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