いまやJ屈指の“魅せる”選手に‼ タイ代表のエース、チャナティップの際立つ存在感と謙虚な人柄

2019年08月28日 斉藤宏則

首位のFC東京を相手に圧巻のプレーを披露

札幌の攻撃陣をリードするチャナティップ。仕掛けから決定的な仕事までをこなすアタッカーだ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 首位・東京の長谷川健太監督が「勝点1だが、されど勝点1」と言い、札幌のペトロヴィッチ監督も「引き分けだったが、東京を相手にこれだけの試合ができたのはいいこと」と振り返る。1-1のドローに終わったこの試合は、両指揮官の言葉を聞く限りでは"痛み分け"という表現はあまり相応しくなく、ポジティブなドローだったようだ。
 
 鈴木武蔵と永井謙佑のランニングスピードにはどちらも迫力があったし、ディエゴ・オリヴェイラのアタッキングも札幌守備陣に脅威を与えていた。ただし、そうしたなかでも際立ったセンスを見せたのがタイ代表のエース、チャナティップだった。
 
 前半の27分すぎ。中盤で激しいマークに遭い、相手選手にほとんど身体を掴まれたような状況になりながらもボールを失わず、そこで一度ボールを見失いかけながらも、さらに迫りくる相手選手を巧みにかわした場面などは圧巻だった。その後も巧みなボールタッチから前線にパスを供給したり、後半開始早々のジェイの同点ゴールもこの選手がサイドにボールを振ったプレーが起点となった。
 
 放ったパスはどれも相手の急所を狙ったものばかりで、小柄ながらもダイナミックに躍動し続けたタイ人のプレーには、着ているシャツが赤黒、青赤問わず、多くのファン、サポーターからの熱視線が強く注がれたのではないだろうか。
 
 それだけのプレーを見せるアタッカーだけに、さすがに「マークが日に日に厳しくなっているのは感じている」。だが、「もしそれを突破できれば大チャンスだし、自分へのマークが厳しくなっている時は、必ずフリーの選手がどこかにいる。その選手にパスを届ければいい」と状況をポジティブに捉えている様子だ。
 
 そんな今季だが、太腿の張りなどで欠場を余儀なくされる試合が時折あった。この東京戦の週も別メニュー調整の日があった。「あまり怪我のないキャリアを過ごしてきたので、今年は悔しい」という。
 
 確かに今季は1月にアジアカップに出場し、そこからフル稼働。6月にタイ代表が参加したキングスカップには出場しなかったものの、まとまったオフは取れていない。その影響もあるのでは?と外からは思ってしまうのだが、「それはまったく関係ない」と本人は一蹴する。
 
「アジアカップに出場した選手みんなが怪我をしているわけではないでしょう? だから、オフが少ないのは関係ありませんよ。まだまだ僕に力が足りないからです」
 

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