【J1コラム】勝手に崩れた浦和の中途半端|浦和 0-2 G大阪

2014年11月22日 熊崎敬

関根を投入しても、冷めた攻撃に再び火は…。

攻め込んだ前半にゴールを奪えなかった浦和は、後半は精神的に受けに回ったのか、相手に流れを渡して痛恨の2失点。ホームで優勝を決められなかった。 (C) SOCCER DIGEST

 浦和の優勝が懸かった埼玉スタジアムでの大一番、それはガンバが勝ったというより、浦和が勝手に崩れたような試合だった。
 
 浦和の敗因はふたつある。
 ひとつは圧倒的に攻め込んだ前半に得点できなかったこと。もうひとつは後半、精神的に守りに入ってしまったということだ。
 
 浦和が前半、敵を圧倒できたのは、システムがガンバよりも優れていたからだ。
 
 浦和はマイボールのとき、CF李と2シャドーの柏木と梅崎、さらにウイングの平川と宇賀神と5人が前線に展開する。対するガンバが4バックのため、浦和は確実にひとりがフリーになる。右ウイングの平川は再三タッチラインを駆け上がり、何本もクロスを放り込んだが、この流れを浦和は生かすことができなかった。
 
 そして後半、浦和はなぜか攻撃的な姿勢を失ってしまう。ガンバがシステムの欠陥に手を加えなかったため、彼らはそのまま押し込むかと思われた。勝負を決めに行くかと思われた。
 
 だが、引き分けでも悪くないと考えたのか、前に出ることをやめてしまった。切り札の関根を投入したが、冷めた攻撃にふたたび火が点くことはなかった。
 
 すべてが中途半端。浦和は流れを明け渡してしまったのだ。
 
 それにしても、ガンバはよく勝ったものだ。
 前半は守るだけで精一杯、攻撃どころではなかった。長谷川監督の目の前のスペースを、平川が何度も駆け上がっていたが、監督はまったく手を打たなかった。
 
 このことについて長谷川監督は、次のように語った。
「相手を抑えることよりも、自分たちのサッカーをすることを考えた。4−4−2の方が攻撃になったときに押し込める」
 
 結果的に監督の判断は正しかったことになるが、浦和の拙攻に助けられたラッキーな勝利という印象は拭えない。
 
 埼玉スタジアムが超満員に膨れ上がった大一番、残念ながら「さすがは日本一を争うチームの激突だ」と唸るような試合ではなかった。
 
 選手たちは雰囲気に飲み込まれて敵にパスを渡してしまい、ターンオーバーが相次いだ。悪い流れを変えようと大胆に仕掛けたり、チームメイトを鼓舞するような選手も見当たらない。
 
 試合の大きさ、重さを引き受けられる、度量の大きな選手がいまのJリーグにはいないということだろう。
 
 敗れた浦和のペトロヴィッチは記者会見で、「失点するまで我々は試合をコントロールした」と語っていた。
 
 サッカーの目的は試合をコントロールすること、ボールを支配することではない。試合をコントロールしていたのなら、そのときにゴールを決めなければならない。首位を走るチームでも、そのあたりが甘い。これがJリーグである。
 
取材・文:熊崎敬
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事