プロとして限界が来ているとは思えないだけに… F・トーレスは最後の一花を咲かせられなかったか?

2019年08月22日 加部 究

今年3月には、首位のFC東京を相手に別格のパフォーマンスも

23日の24節・神戸戦が現役最後の試合となるフェルナンド・トーレス。果たして、どのようなパフォーマンスを見せるだろうか。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 Jリーグの助っ人選びは、確実に難しくなっている。ファンに夢を与えようと知名度の高いスター選手を獲得しても、相応の効果は望み難い。一方でベテランの域に到達しているスター選手には即効性が求められるから、順応への猶予期間も限られる。元スペイン代表のダビド・ビジャ(神戸)や元ブラジル代表のジョー(名古屋)のケースを見ても、とりわけストライカーを活かすには、先に土台を整えておく必要がある。
 
 Jリーグ草創期を振り返れば、来日したスター選手たちの大半が期待通りの活躍でチームを牽引した。ところが名古屋が獲得した1986年メキシコ・ワールドカップ得点王のガリー・リネカーは、大きく期待を裏切った。もっとも不振がすべてリネカー自身に起因したかと言えば、そうでもなさそうだ。Jリーグ開幕戦でマークした鹿島(当時)の大野俊三氏は語っている。
 
「前を向かせたら、小刻みなドリブルと振りの速いシュートは脅威だった。でもリネカーが、ここにくれ、と動き出しても、それに合わせたパスを出せるのがジョルジーニョだけだった」
 
 その後、Jリーグには2人のワールドカップ得点王が参戦したが、華々しい功績は残していない。それでも磐田に加入したサルバトーレ・スキラッチの質の高いプレーは良い手本になったが、C大阪の優勝への切り札として招かれたディエゴ・フォルランは、逆にJ2降格の悲哀を味わうことになった。典型的な点取り屋のリネカーやスキラッチに比べれば、幅広いスキルを備えたフォルランは、躍進著しいチーム状況も相俟って期待値が高かったが、チームの成績が低迷すると守備への対応力を問われ、ベンチを温めることになった。
 
 フェルナンド・トーレスも、当然夢を売るための戦力補強だった。それなら求められるのはケタ違いの質だったはずなのに、逆に最も得意なエリアから離れる頻度が高まり、仕事量が増えていた。
 
 今年3月、FC東京とのアウェー戦でも、盛んに中盤に降りてビルドアップをサポートしている。もっともボールを引き出せば、安定した技術と身体の強さを活かし、髙萩洋次郎のチャージを難なくかわしたり、橋本拳人を置き去りにしていたりしたから、引退を決断するほどの衰えは感じられなかった。むしろ来日してからもゴール前での駆け引きやフィニッシュの精度、空中戦の強さには唸らせるものがあり、物足りないとすれば、得意な局面を披露出来る頻度だった。結局この試合で退場者を出した鳥栖は0-2で敗戦。トーレスは苛立っていた。
 
「きょうは勝つためにすべてを出し尽くし、よく戦った。しかしどうも日本のサッカーはルールが異なるようで、これから本を買って日本のルールを勉強しようと思う。もちろんレフェリーもミスはする。だがもっとルールを理解した方がいい」

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