「本気で湘南に来ている」 二度目のレンタル移籍、山田直輝は背番号10の提示をどう受け止めたか?

2019年08月13日 佐藤亮太

加入後初出場で初ゴール! 山田の覚悟を問うべく 坂本絋司SDがした提案とは?

移籍後初出場で初ゴールを決めた山田。鮮烈な“ゴラッソ”だった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 あんなにはじけた笑顔を見るのは久しぶりだった。
 
 8月11日のJ1リーグ23節、湘南ベルマーレはアウェーでジュビロ磐田と対戦。1-1で迎えた80分。途中出場で加入後初出場を果たしたMF山田直輝は、ゴールラインぎりぎり、角度のないエリアから右足を一閃。逆サイドのネットにシュートを突き刺し、逆転に成功。喜びに沸くゴール裏に向け、山田は両手でユニホームを左右に引っ張りながら、エンブレムを見せつけた。これは湘南・山田直輝の決意表明だった。

 
 山田にとって浦和での約1年半は自身の未熟さを思い知らされる日々だった。18年、レギュラー獲りを誓い、3年の期限付き移籍を経て、浦和レッズに戻った山田だが6月には練習中に右腓骨を骨折。全治4か月の怪我でシーズンを棒に振った。捲土重来の今季だが、オズワルド・オリヴェイラ監督からは評価されず、帯同はおろか、紅白戦さえ入れなかった。さらに6月、大槻毅監督が就任したものの、出番はほとんど与えられなかった。
 
 そんな7月下旬、湘南からオファーが届いた。急なオファーに山田は驚いたが、迷いはなかった。それは現状打破だけでない。サッカー選手として、ひとりの人間として成長したいという思いがあったからだ。
 
「浦和ではクレバーで自分を持っている、完成された選手が揃っている。だから監督が代わってもメンバーが大きく変わらない。でも自分みたいに(気持ちが)子供みたいな選手は湘南のように育ててもらうチームが合っていると思った。僕の場合、自分の型にハマれば、誰にも負けない自信はある。でもハマらないと良さが出せない。そこが自分の弱さであり未熟さ」と省みた。
 
 その山田を「ラストピース」としたのが湘南・坂本紘司スポーツダイレクター(以下SD)。坂本SDは半年前から山田獲得に動いていた。坂本SDは「次の移籍となると直輝も相当な覚悟が問われる。そのなか、よく湘南を選んでくれた」と加入を喜んだ。その坂本SD、山田の覚悟を問うべく ある提案をした。それは背番号10番を着けること。

「『10番はどうだ?』と聞いてみた。そこで受け取らないんじゃ、ちょっとダメだな~と思ったけど、直輝が『10番でお願いします』と言った時、嬉しかった。期限付き移籍、半年間しかない短い間で結果を出す、その覚悟を感じた」

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