「チーム愛がない」「評価を求めて当然」賛否両論の神戸移籍に、藤本憲明が抱いた葛藤とは?

2019年08月12日 柚野真也

「チームメイトもいい人ばかり。何も言うことはない」だからこそ悩んだ

今夏、大分から神戸に完全移籍した藤本。移籍後初戦は、いきなり古巣・大分との対戦だった。(C) J.LEAGUE PHOTOS

[J1リーグ22節]大分1-1神戸/8月10日(土)/昭和電工ドーム
 
 大分サポーターにとっても突然の出来事だったはずだ。8月7日の「藤本憲明、ヴィッセル神戸への完全移籍」という発表である。藤本自身悩んだ末の決断だった。2018年に当時J3鹿児島からJ2大分に加入。片野坂監督のもとでJ1昇格に貢献した。JFLから自らの得点で存在感を示し、ひとつずつカテゴリーを上げてストライカーは初めてのJ1で「結果を残したいし、自信はある」と意欲を見せていた。
 

 今季の前半戦は有言実行。開幕・鹿島戦で2ゴール。派手なJ1デビューを飾り、3年連続異なるカテゴリーでの開幕ゴールの偉業は話題性に事欠かず、一気に"時の人"となった。決定力の高さを見せつけ、21節を終えて8ゴール、大分の躍進を支えた。ただ、直近の3試合はパフォーマンスが低く、先発から外れ、ジョーカーとしてピッチに立つことを求められた。
 
 藤本に正式なオファーが届いたのは、発表からさかのぼること10日前。1年半過ごした大分にはもちろん、相当な愛着があった。「ここの環境はすごくいい。チームメイトもいい人ばかりで、何も言うことはない」と語っていた。
 
 だからこそ悩んだ。オファーを聞いた当初は残留という気持ちもあった。「トリニータでみんなんと一緒にやるのが一番だと思った」とも言う。しかし今月18日で30歳、プレーできる時間も限られている。大分を数倍上回る評価、地元関西への凱旋、何より日本代表と縁のなかった藤本にとって、世界的に名を馳せたスター選手とプレーできる喜びに心踊った。
 
「みんなに向こうで活躍している姿を見せたい。試合で活躍して神戸の順位も上げられればいい」
 
 片野坂監督だけでなく社長からの慰留もあったが意思は固かった。「損得勘定ではなく本人の意思を尊重した。(藤本は)まだ選手として成長できる。このタイミングでのオファーは神戸でしかできないし、戦力として評価しているからこそ」と西山強化部長も語る。
 

次ページいきなりの古巣との対戦。試合前にはアナウンスが聞こえないほどのブーイング

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事