【週刊サッカーダイジェスト編集長のレビュー】面目躍如のアギーレ 細部を詰めて「連覇」へのプラスアルファを

2014年11月19日 谷沢直也(サッカーダイジェスト編集長)

ゲームプランに沿って勝負に徹した采配。

「勝ちに行く」の言葉通り、日本を勝利に導いたアギーレ監督。アジアカップ連覇に向けて、あとはしっかりディテールを突き詰めたい。 (C) SOCCER DIGEST

 試合前に配られたメンバー表を見た時、頭の中にすり込まれていた「日本対オーストラリア」のイメージと異なる事実が、そこにはあった。先発11人の平均身長は、日本が179.3センチでオーストラリアが178.6センチ。「高さを活かす」イメージが強かったライバル国を、意外にも日本が上回っていたのだ。
 
 そしてキックオフ後にピッチ上で繰り広げられたサッカーも、想像していたものとは異なるものだった。ショートパスをつないで支配率を高めるオーストラリアと、ボールを奪ってからシンプルに前線へ放り込んでいく日本。2006年のドイツ・ワールドカップで対戦して以降、ワールドカップ最終予選やアジアカップ本大会で激闘を繰り広げてきた両国だが、こんな試合の入り方は記憶にない。
 
 もっとも、ハビエル・アギーレ監督はこうした展開になることは織り込み済みだったという表情で、試合後にこう振り返っている。
「前半は相手がかなり強いプレッシャーを掛けてきたので、あまりつなぐことができなかった。しかし我々は、それが90分間続かないと予測してプレーし、実際にそのとおりになった」
 
 この試合のハイライトは、前半の35分過ぎ。ベンチ前に出たアギーレ監督が、ピッチ上の選手たちにシステム変更を指示した場面だ。4-3-3の左インサイドハーフに入っていた遠藤保仁を下げて長谷部誠との2ボランチにし、右インサイドハーフの香川真司をトップ下に上げた4-2-3-1へ。
 
 序盤、オーストラリアの4-3-3と対峙した日本は、相手のアンカーを務めたジェディナクに圧力を掛けられずにポゼッションを許し、長谷部の両脇に広がるスペースを何度も突かれて、「快適にプレーできていなかった」(アギーレ監督)。
 
 このシステム変更によって、日本が劇的に良くなったとは思わない。だが、相手の陣形に対してすべての局面でマッチアップするようになったことで、守備が"ハマる"ようになり、流れが次第に日本へ傾いたのは確かだ。
 
 オーストラリアが積極的にプレスを掛けてきた序盤の時間帯は、マイボールにしてもシンプルに縦へ蹴って失点のリスクを抑え、システム変更後にリズムを掴んだら日本らしい連動性ある攻撃を増やしていく。
 
 前日会見でアギーレ監督は「明日の試合は勝ちに行く。テストではない」と語っていたが、その言葉どおり、ゲームプランに沿って勝負に徹した采配を振るった印象で、「リアリスト」の面目躍如といったところだろう。
 
 最後に"天敵"ケイヒルに1点を叩き込まれたのは余計だったが(本大会でもし対戦することになれば、日本はこの4番の姿にまた怯えることになる……)、ホスト国に勝って来年1月のアジアカップに臨める意味は大きい。

次ページ香川の能力をどう活かすかが、ひとつの鍵に。

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