【岡山】大宮に惜敗…好セーブ連発のGK一森純は唯一の失点に「自分の中の葛藤で負けてしまった…」

2019年08月12日 佐藤香菜(サッカーダイジェスト)

“やられたくない”想いと“やらなくちゃいけない”こととの葛藤で

岡山では決して安泰ではないポジションで、今季は9節からゴールを守る一森純。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

[J2リーグ27節]岡山0-1大宮/8月10日(土)/シティライトスタジアム
 
「あのタイミングで大前(元紀)選手が入ってきて、いろんなことを考えさせられた」
 
 0-1で大宮アルディージャに敗れたファジアーノ岡山のGK一森純は、相手に決勝点を与えてしまった65分のフリーキックのシーンをそう振り返った。
 
 この日の一森は、かなり忙しかった。開始10分、大宮の199センチの長身FWロビン・シモビッチが放った打点の高いヘディングシュートを右腕いっぱいに伸ばして防ぎ、続く12分、今季出場機会を増やし3得点と調子を上げている2年目の若手MF奥抜侃志の正面からの右足シュートを弾き出すと、そのわずか1分後にも再びR・シモビッチから今度は地面に叩きつける強烈なシュートに好反応で対応し、ゴールを割らせなかった。
 
 後半のキックオフ直後には、奥抜、小島幹敏、茨田陽生、R・シモビッチから約30秒間に渡る波状攻撃を浴びるも、フィールドのメンバーと一丸となってゴールを死守。次々と展開される大宮の攻撃に息つく間もなかったが、集中を切らさず、何度も決定的な危機を防いだ。そんな中で訪れたのが、65分の大宮のフリーキックだった。
 
 ドリブルで仕掛けてきたイッペイ・シノヅカを味方DFがペナルティエリア付近で倒してしまい大宮にFKを献上。そのタイミングで大宮が交代カードを切り、投入された大前元紀がキッカーとしてボール前に立った。一森は、対峙する大前に対して味方の壁をゴールやや右寄りに作り、自身はゴール左寄りにポジションを取った。主審の笛が鳴り、大前のキックに合わせて右に重心を傾けたが、ボールの軌道は逆サイド。ボールに合わせて素早く反応を切り替えたが間に合わず、横に伸ばした腕の先をすり抜け、ボールはゴールラインを越えた。
 
「スカウティングでキーパー(一森)の特徴は聞いていたので、逆を突いた」
と、キッカーを務め、決勝点を奪った大前はこのシーンを振り返る。一方の一森は、
「セオリーでは壁のない方をキーパーは守るというのがあるんですけど、そのなかでも『やられたくない』という想いと『やらなくちゃいけない』こと、自分の中での葛藤で負けてしまった」
と振り返り、「キッカーとの駆け引きで自分が負けただけ」と言う。

 90分を通じて何度も好セーブを見せ、幾度もの決定機からゴールを守ったが、
「キーパーというポジション柄、あの一本がやられてしまうと全部チャラというか、あの一本がすべてかなと思いますね。ゲームに関して言えば、自分が……」と言葉を詰まらせ、
「自分がなんとかしないと」という想いだったと、悔しさを滲ませた。
 
 今季はGK金山隼樹らと切磋琢磨するなか開幕出場は果たせず、9節千葉戦から先発のチャンスを掴んだ一森。チーム内での活発な競争と今節の悔しい経験を経て、今後さらに力強くゴールを守ってくれるはずだ。

取材・文●佐藤香菜(サッカーダイジェスト編集部)
 
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