【高校選手権/代表校レポート】静岡・静岡学園|葛藤混じりの速攻に活路

2014年11月16日 平野貴也

「ゆっくり攻撃できないので、縦にシンプルに勝負」

静岡学園
所在地:静岡県静岡市葵区東鷹匠町25
創立:1965年
創部:1972年
主なOB:三浦泰年、永田充(浦和)、小林祐三(横浜)、狩野健太(柏)、大島僚太(川崎)
(C) SOCCER DIGEST

「速攻スタイルの静岡学園」は、新鮮な味付けだ。
 静岡学園と言えば、かつてのブラジル代表を彷彿とさせる個人技重視が伝統的なスタイルだ。ゆったりとした展開から、テクニックで相手を翻弄。「次は何を仕掛けるのか」と楽しみにさせるようなチームだ。
 
 しかし、今季のチームは一味違う。速攻が特徴なのだ。ボールを奪えば、両ウイングが積極的に持ち上がり、敵陣に入るやサイドチェンジを織り交ぜて相手を揺さぶる。ショートカウンターを繰り出し、低めのクロスからゴールを狙う。
 
「本当は、もっと左右に振って、隙間でボールを受けてというプレーをゆっくり展開して、遅攻と速攻を使い分けたい。ゆっくりと歩きながら攻めるというのが、良いときの(静岡)学園。それに加えて速攻がある。でも、今のチームは残念ながら、ゆっくりと攻めることができない。この大会(県予選)では前への速さ、強さしかない。まあ、ゆっくりと攻撃することができないので、縦にシンプルに勝負しました」
 川口修監督はそう話し、藤枝東との名門対決を制した静岡県予選・決勝についても、
「正直、ダサい勝ち方だった。OBの目もある」
 と自虐的に振り返った。
 
 静岡学園が掲げるテーマは「リズム、テクニック、インテリジェンス」。技術とアイデアがあれば、スピードに頼らなくてもゴールを目指せるという自負がある、そのため、速さを武器とすることに葛藤があるようだ。
 さらに川口監督には、選手たちの将来を思いやっての忸怩たる思いがある。
「サイドは個で崩しているけど、ドリブルももう少し緩急を使いたい。そうじゃないと、彼らはスピードがあるけど、プロや大学といった上のステージで通用しなくなってしまうから」
 
 とはいえ、実際は川口監督が言うほど技術を欠いたスピードだけのチームではない。たしかに、対角線に飛ばすロングパスからの速攻は増えた。しかし、速攻の急先鋒となる中澤史伝、左の旗手怜央は、スペースを突き、スピードに乗った状態からの仕掛けではあるが、ドリブルで持ち上がれば必ずと言っていいほどファーストディフェンダーを個人技で抜く。この2人に限らず、しっかりとした足技に静岡学園の伝統が感じられる。
 
 相手はサイドの1対1で抑えられないためにボールサイドへ人数をかけなければならず、その後の逆サイドへの揺さぶりに対応しきれなくなっていく。とにかく前へ仕掛けるため、奪われればピンチとなる。そのため守備への切り替えは速く、当たりも強い。藤枝東戦では速攻と同時に球際の激しさも目立っていた。攻めまくりながら1得点。守備が機能していなければ、敗れていた可能性もある試合だった。

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