【J2】激しさと集中力で磐田を圧倒。急浮上の山形が最後に笑う?|磐田 0-2 山形

2014年11月16日 熊崎敬

激しいプレスと徹底したクロスで磐田に圧力を。

敵地で磐田に快勝。ここにきて3連勝と波に乗る山形が、POからJ1へと一気に駆け抜けるか。 (C) SOCCER DIGEST

 最終節を前にして、J2の昇格プレーオフ(PO)争いはひとつも当確チームがないという大混戦となった。
 
 3位から6位までの4チームが出場権を手にするPO。前節終了時点では、3位磐田から10位京都までの8チームが出場の可能性を残していたが、今節を終えて磐田、北九州、千葉、山形、大分の5チームに絞られた。
 ちなみに北九州はJ1ライセンスを持たないため、6位以上に入ってもPOに出場できない。この場合、POは3チームでの争いとなる。
 
 北九州も含め、PO圏内の可能性を残した5チームの最近5試合の成績は次の通り。
 3位磐田 勝点66 △△△△●(0勝4分1敗 勝点4)
 4位北九州 勝点65 〇〇△●●(2勝1分2敗 勝点7)
 5位千葉 勝点65 〇〇△●〇(3勝1分1敗 勝点10)
 6位山形 勝点64 〇●〇〇〇(4勝0分1敗 勝点12)
 7位大分 勝点63 ●〇〇●〇(3勝0分2敗 勝点9)
 今季、一度しか連勝がなかった(それも2連勝)山形が最後の最後で3連勝して、PO圏内に飛び込んできた。密かに潜航してきた「イエロー・サブマリン」が急浮上した印象だ。
 
 今節、山形は敵地で磐田に2-0と快勝したが、その一戦は前夜の日本代表のゴールラッシュも霞むような、素晴らしい試合だった。
 
 もちろん山形には、日本代表のようなテクニックはない。そのことを自覚する彼らは、集中力と運動量、局地戦の激しさによって格上の磐田を凌駕した。
 
 風上に立った前半、彼らは激しいプレスと徹底したクロスによって、磐田守備陣に圧力をかけ続けた。巨漢ディエゴとキム・ボムヨンの襲いかかるようなチェイスに、磐田は腰が引けてしまった。
 
 磐田のようなテクニシャン揃いのチームは、接触の多いラフな展開を苦手とする。そのことを知る山形は、敵をトラブルに巻き込むようなプレーを次々と繰り出した。相手フリーキックのとき、壁になった選手が下がるように注意されていたが、それも駆け引きのひとつだろう。
 
 シュート数では4対10と負けたが、心理戦で優位に立った山形は、守りが崩される場面はほとんどなかった。攻めては素早い展開でスペースを突き、2本のクロスをゴールに結びつけた。
 試合後、GK山岸は「ウチらしいハードワークと労を惜しまない守備ができて、少ないチャンスを得点に結びつけられました」と語っていた。この言葉からも、山形が狙い通りの試合運びをしたことが窺える。
 
 価値ある先制点を決め、守備でも奮闘したCFディエゴに、「山形はウルグアイのような試合運びをしますね」と感想を伝えると、この頼りになるブラジル人は「ウルグアイもいいけれど、アルゼンチンはもっと厄介な連中だよ」と笑みを浮かべ、こう続けた。
「とにかく次、最終節に勝つことだ。戦術よりも気持ちが何よりも大事なゲームになるよ」
 中盤で身を粉にして働き続けた松岡も、「ぼくらは敵をいなして勝てるチームではないので、ガムシャラに戦うしかありません」と話していた。
 
 上手さゆえの迷いが見える磐田とは違い、できることが限られている山形は、それだけに潔い。
「自分たちのできることを120パーセントやるだけだ」という割りきりと覚悟が、集中力の高さや局地戦での激しさを生んでいる。
 
 過去2年のPOを振り返ると、上手くはないが、激しさと集中力を備えた大分と徳島がJ1への切符をつかんだ。
 PO出場が決まっていないいま、それを言うのは気が早いかもしれないが、最後に笑うのは「イエロー・サブマリン」の乗組員たちかもしれない。
 
取材・文:熊崎敬
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