【日本代表 コラム】4-3-3で躍動感あふれるプレーができた理由と、その意味

2014年11月15日 加部 究

長く慣れ親しんだ互いの関係性を即興で見つけ出した選手たち。

復帰した遠藤をはじめ、ザッケローニ体制の中心メンバーは多少配置が変わっても阿吽の呼吸で連動していった。(C) SOCCER DIGEST

 約束された結果を得た。
 
 アギーレ監督にとってホンジュラス戦は、そんな確認作業のような試合だったに違いない。
 
 9月、10月で4試合をこなしたチームがぎこちなかったのは、4-3-3という新しい課題を与えられたことが主要因ではない。硬直した前体制に鮮度を加えたい指揮官が、実験的なメンバーで臨んだからだ。逆にウルグアイ戦やブラジル戦のようなメンバーを組めば、前任のザッケローニ体制で続けた4-2-3-1で戦っても結果に大差はなかったはずだ。
 
 結局アギーレ監督は、過去2か月間は計算の成り立つワールドカップ代表を担保としてテストを進めて来たことになる。9月はサプライズを詰め込み、大化けする素材がいないかを見極めた。メディアも認識しないような選手を呼び寄せ、日本の底力を確認しようとしたのかもしれない。10月はフレッシュだが、もともと代表に肉薄していた実績のある選手を招集した。つまり最初の2か月間で新たな可能性を洗い出した上で、最後にアジアカップを戦うための確認作業をした。裏返せば、満を持して呼んだ内田、遠藤、今野、さらに9月は故障でプレーができなかった長谷部は、アギーレが見ても最も計算の成り立つ選手たちだったということだろう。
 
 効果はてき面だった。ホンジュラスは「アメリカと引き分け、メキシコに敗れてから来日」(アギーレ監督)し、北中米で戦えば必ずしも楽な相手ではなかったのかもしれない。だが長旅と時差調整、さらには慣れない寒さとも戦うハンディを抱えた内弁慶は「私が指揮してきたチームの選手たちとは信じられないほど戦う姿勢を欠いた」(エルナン・メドフォード監督)状態で、日本代表はまさに自分たちのサッカーを実践できた。
 
 岡崎がサイドからCFに、本田がトップ下から右に回り、アンカーの長谷部の前では遠藤と香川が並ぶなど、ザック時代と多少配置は変わっても、互いに特徴を知り尽くした選手たちは、違和感なく阿吽の呼吸で連動していった。試合前日にメキシコから合流したアギーレ監督は「1度しかトレーニングセッションに立ち会えなかった」そうだが、彼らは4-3-3というテーマの中でも、長く慣れ親しんだ互いの関係性を即興で見つけ出していった。
 
 例えば、ザック時代は長谷部、遠藤のボランチ2枚とトップ下の本田がトライアングルを描くのが基本だったが、この日は本田が香川に代わり、長谷部を頂点にした逆三角形に変化した。香川は最初から右サイドへとスライドし、本田との距離を詰め心地良くショートパスで絡む。香川が中央のトップ下の位置でプレーをすれば、遠藤はチームが攻撃中にもカウンターをケアし長谷部と並列近くまで下がって待機し、今度は遠藤がトップ下に進出すれば香川が降りてバランスを取る。一方でサイドに流れたインサイドハーフ(香川、遠藤)は、同サイドのウインガー、SBと絡んで攻撃を構築する。こうした関係性は、4-2-3-1の頃と大差がなかった。

次ページ4-3-3によって個々の特色を出しやすくなったという見方も。

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