【横浜】神戸移籍前のラストマッチ、試合終了の瞬間、ピッチ上の飯倉大樹は何を思ったか

2019年07月28日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「大切だと思い始めてから、その時間はすごく短い」

横浜での“ラストマッチ”で、飯倉は75分に途中出場。1失点を喫したが、果敢なシュートブロックなど“らしい”プレーでゴールを守った。写真:田中研治

 アディショナルタイムは5分。横浜の最終ラインでドゥシャンからの横パスを飯倉大樹が足もとに収めようとする直前、タイムアップの笛が鳴り響く――長きに渡り、トリコロールの守護神として活躍してきた男にとって、神戸移籍前の横浜でのラストマッチが終わった瞬間だった。
 
 7月27日のマンチェスター・シティとの親善マッチ前日、神戸への完全移籍を発表。マンC戦で飯倉は75分に途中出場し、1失点を喫するも、ゴール前に侵入してくる相手に対し果敢に前に出てシュートブロックするなど、"らしい"プレーでゴールを守った。
 
 試合が終わった瞬間、ピッチ上で飯倉は何を思っていたのか。
 
「F・マリノスでの時間が終わったんだなって。プレーしている時もずっと、あと何分で終わっちまうんだとか、ロスタイムはあと5分だとか。いつもだったら5分は長く感じるのに、5分ってこんなに早いもんなんだって」
 
 時間が過ぎるスピードを、いつもより早く感じていたのにはもちろん、理由があった。
 
「当たり前のようなことが、当たり前じゃないんだなって。F・マリノスにいて、努力することの大切さとか、人に対して正直に、まっすぐにいることとか、すべてを教わった。そのすべてを出そうと思っていたけど。やっぱり終わる時っていうのは、なんかこうも早く終わるもんだなって。人はその時その時を普通に生きてしまうけど、大事な時間って、大切だと思い始めてから、その時間はすごく短いし。最後の15分とアディショナルタイム5分は、そんな風に思っていた」
 
 試合後、ピッチ上で仲間たちと熱い抱擁を何度もかわし、スタンドを1周してファン・サポーターに挨拶して、マイクを持って別れのスピーチをし、胴上げされる。そしてロッカールームに引き上げようとしたその時、再び、飯倉のチャントが鳴り響く。
 
「いーいくら、いーいくら、いいくら、いいくら、いいーくーらー!」
 
 メインスタンドのちょうど下で、背番号21はくるりとゴール裏のほうに向き直り、深々とお辞儀をして、愛すべき日産スタジアムのピッチから去った。
 
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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