「代表がすべてではない」 法大FW上田綺世が会見で明かした鹿島“前倒し加入”の本当の理由

2019年07月27日 岡島智哉

コパ・アメリカ日本代表に、大学から唯一の選出であったことがキッカケに

鹿島とプロ契約を交わした上田綺世が26日に会見を行なった。会見には法政大の長山監督と鹿島の鈴木強化部長が同席した。写真:岡島智哉

 法政大FW上田綺世が鹿島とプロ契約を締結したことが26日、発表された。2021年の加入が内定していたが、1年半後を待たずに前倒す形での加入となった。上田は「この決断が失敗じゃなかったと言えるようにプレーしていきたい。タイトル獲得に貢献していけたら」と意気込みを語った。

 
 以前からプロ専念のタイミングを模索していた上田は、コパ・アメリカ(南米選手権)の出発前に法政大側に意志を伝えた。コパ・アメリカで無得点に終わったことよりも、大学から唯一の選出であったことがキッカケだったという。「大学の中で突き抜けた存在になってきていた。彼がより成長していくための環境を僕ら指導者も整えないといけないというところもあった」(長山一也監督)と大学側も快諾し、鹿島側に提案。「即戦力として歓迎します」との返答を得た結果、契約締結の運びとなった。サッカー部は退部するが、大学には引き続き通学する。同様のケースは過去に長友佑都(明治大)、武藤嘉紀(慶応大)、室屋成(明治大)らの例がある。
 
 東京五輪を主眼に置いたチャレンジと捉えれば、この時期の鹿島入りは少々リスキーでもある。現状はセルジーニョ、土居聖真、伊藤翔と先発2トップの椅子を争う構図となるが、3人ともに確かな技術と献身性を持つ実力者だ。突き上げを狙う若手もいる。大学を主戦場としていれば、五輪世代のセンターフォワードの定位置は約束されていただろう。だが上田は「その先」を見据えている。
 
「代表がすべてではない。プロキャリアを歩んでいくなかで、海外に進むためには、いま鹿島に入ることが大事だと感じたので決めた。今後アンダー世代に定着するため、五輪に出るために決断したわけではない」
 
 思えば2月に行なわれた2021年加入の内定会見でも、上田は海外志向を口にしていた。J内定会見で海外への夢を口にするケースは稀なので少し驚いたが、同席した鹿島の椎本邦一スカウト担当部長も「いずれは海外に行く選手だと思っています」とうなずいていた。この夏に巣立っていった安部裕葵が、安西幸輝が、鈴木優磨がそうであったように、鹿島という環境で勝利のために献身することが成長につながると考えた上での、このタイミングでの決断だった。
 
 もちろん、鹿島を「足かけ」の場と捉えているわけではない。「その先」を見る余裕などないほどの激しいポジション争いとタイトル獲得に向けた戦いが待っている。
 
「まずは自分の信頼を得ること。それができたら、クラブのために、優勝のために何ができるか。点を取ることもそうだし、ピッチ外で影響を与えられる選手になることが大事」
 プロになった以上、鹿島のために戦い、鹿島のために勝利をもぎ取りにいく姿勢こそが、今の上田に最も求められていることだ。
 
取材・文●岡島智哉(報知新聞社)
 
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