黄金期のヴェルディを知る永井秀樹監督のド派手なデビュー戦! 2点差を跳ね返す采配で示した確かな手腕

2019年07月25日 海江田哲朗

前半で2点のリードを許した東京V。永井監督が施した修正とは?

23節の愛媛戦から指揮を執る東京Vの永井監督。ここからチームを昇格争いへ引き上げることができるか? 写真:滝川敏之

 掲示されたアディショナルタイムは、4分――。20日の23節、東京Vが愛媛をホームに迎え、3-2でリードしていた。
 
 3分半が経過し、永井秀樹監督が腕時計を見る。10秒後、再び時計に目をやった。

 
 終了のホイッスルの瞬間、永井監督に笑顔はない。ベンチに向かって踵を返し、コーチ陣と輪になって抱き合い、やっとその口元から白いものがこぼれた。
 
 17日、成績不振によりホワイト監督が解任され、東京Vユースの永井監督がトップの指揮官に就任。わずか3日の準備期間、さらにS級ライセンスの取得から9日という異例の早さで初勝利を挙げたことになる。
 
「できることが限られるなか、選手が自分のやりたいサッカーをやろうとしてくれた。まだまだこれからですが、まずは選手たちに感謝したいです。また、藤吉(信次)や菅原(智)をはじめとするコーチングスタッフが、この試合に向けて徹夜に近い作業をしてくれました。それには言葉にできないくらいの感謝の気持ちがある」(永井監督)
 
 前半、愛媛に2点のリードを許す、苦しいゲーム展開だった。流れを引き戻すきっかけになったのは、ユースで永井流のメソッドを注ぎ込んだ森田晃樹、山本理仁の投入だ。
 
「彼らは自分のやり方を理解してくれているので、後半のほうがプレーはスムーズだったかなと思います。その意味では、教え子に少し救われましたね」
 
 森田は的確なポジショニングで東京Vのポゼッションを支え、チャンスと見るや前線にも進出。3バックの右に入った山本は高精度の左足で縦パスをビシビシ通し、攻撃の起点となった。
 
 結果、50分に小池純輝がチームトップの今季8点目で1点差に詰めると、63分にレアンドロ、68分には永田拓也が立て続けにゴールネットを揺らし、ゲームをひっくり返している。
 
 監督会見で、永井監督は選手の立ち位置の重要性を説いた。
「正しいプレーを行なうためには、まずは正しい位置に立つこと。ポジショニングの優位性は絶対に必要になるというのが自分の考えです。前半、正しい位置に立てていなかったのが、後半に入ってからは立ち位置が修正されたと思います」
 
 布陣を変え、メンバーを代え、ピッチに指示を送り、そうなるように導いたのは監督の手腕にほかならない。刻々と変化する戦況、ゲームの流れがクリアに見えていたからこそ成し得た仕事だ。
 
 スクランブル態勢で掴んだ逆転勝利。現役時代はアイドル的な人気を博し、Jリーグ創成期の華やかさを知る永井監督らしい、ド派手な始動となった。
 
取材・文●海江田哲朗(フリーライター)
 
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