ボバンが本田を斬る! 「それでも黄金期のミランではベンチ入りも難しい」

2014年11月12日 ズドラフコ・レイチ

右ウイングはレフティーの本田にフィットしている。

開幕から好調を維持している本田を改めて検証。ミランOBの目には、どう映っているのか。 (C) Alberto LINGRIA

 シーズンのおよそ3分の1を消化した現時点で、6ゴールはチーム最多。2年目のミランで、本田圭佑は主役級の活躍を続けている。好調を維持する「10番」は、クラブOBのレジェンドの目にどう映っているのか。
 
 登場願ったのは、セリエAの3連覇やチャンピオンズ・リーグの制覇など、栄冠をほしいままにした1990年代の黄金期に「10番」を背負い、「グランデ・ミラン(偉大なるミラン)」の主軸を担ったズボニミール・ボバンだ。移籍当初から本田を厳しく評価してきたOBのひとりであり、本田を褒めない最後の人物とも言われる「ロッソネーロの旧・10番」は、「現・10番」にそれでも厳しい視線を注いでいるのか――。
 
「いまのミランに不可欠な存在」と認める一方で、かつての輝きを失ってしまった今のミランへの憂いもあってか、舌鋒はついつい鋭さを増し……。
 
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 まず始めに、ひとつだけはっきりさせておきたいことがある。本田は本当の意味での「10番」ではない。本当の10番とは司令塔。中盤、ディフェンス、前線、全てをつなぎ合わせ、チームを動かす選手のことだ。その点、本田が本来のポジションとしているのはセカンドトップだし、いまのミランで主にプレーしているのも4-3-3の右アウトサイドである。まあ、昨今のチームには10番のポジション自体がないことが多いので、それは仕方ないのかもしれないが……。
 
 この右サイドというポジションは、レフティーの本田にはフィットしていると思う。得意とする左足でのシュートやドリブル、1対1の能力を十分に生かせるからだ。ただ、そこでプレーするには、どうしても上がったり下がったりとかなりの運動量が求められる。移籍当初の本田はそれほど動くことに慣れていなかったし、身体もできていなかった。プレーに大きな波があったのも当たり前だ。
 
 とにかく、CSKAモスクワから移籍金ゼロでやって来た頃の本田の出来は散々だった。昨シーズンの成績は14試合でたったの1ゴール。なまじ10番を背負ったばかりに、風当たりは強かった。イタリアのメディアは容赦がないので、本田はかなり叩かれた。ある者は無駄な粗大ゴミだと言い、ある者は謎の未確認物体だと言った。とにかく、誰もが失望したと書き立てた。ミランのようなチームの背番号10を背負うということは、大変な名誉であると同時に、責任も非常に重いのだ。
 
 セリエAは世界でも有数の難しいリーグだ。良いプレーをするには、とにかくこの国のサッカーに慣れることが必要である。私自身もイタリアでプレーした外国人選手として、その重要性と難しさを肌で知っている。ただ私は、バーリで1年プレーした後にミランに移籍した。いわば1年の修行期間があったようなものだった。

次ページいまのミランになくてはならない存在だ。しかし――。

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