【三浦泰年の情熱地泰】コパ・アメリカ編|惨敗劇のトラウマを抱えていたブラジル国民。「規律と献身」のセレソンが歓喜をもたらした!

2019年07月09日 サッカーダイジェストWeb編集部

大会前に「コパ・アメリカは負けてもいいんだよ」「ワールドカップが大事なんだ」と言っていたブラジルの友人たち

コパ・アメリカは、ブラジルが4大会ぶり9度目の優勝を飾って幕を閉じた。(C) Getty Images

 かつての日本代表監督、イビチャ・オシムさんがこんなことを言っていた。
 
「期待しすぎてはいけない」
 あまりに期待が大きいと、期待通りに物事が運ばなかった時にショックが大きいからだと……。あまり大きな期待はしない方が良いというのだ。
 
 そんなことを思い出したのは、今回のコパ・アメリカを迎えるブラジル代表に対するブラジル国民の態度からだ。
 
 オシムさんの教えに忠実に、期待しすぎていなかった。
 
 2014年のブラジル・ワールドカップ。準決勝のドイツ戦で、国民がショックで泣き崩れたブラジルサッカー。
 
 1-7という屈辱の敗戦のトラウマをコパ・アメリカの時期にサンパウロに住む僕は、強く感じていた。
 
 そして、彼ら(僕のブラジルの友人たち)が有頂天になると「ブラジルはもう昔とは違う」と、ドイツに1-7で負けたではないか……と罵ってしまう、酷い僕がいた。
 
 ただ、そんな僕もブラジル人の気持ちは痛いほどよく分かっていた。
「コパ・アメリカは負けてもいいんだよ……」「ワールドカップが大事なんだよ……」「コパ・アメリカの価値は国内のリーグより低いんだよ」という友人たちの言葉。そこには、どこか彼らも保険をかけたがっているように感じたからだ。地元開催だけに、期待して裏切られた時のショックを和らげるための言葉なんだろうと感じていた。
 
 僕は今大会で、ブラジル代表の試合を生で2試合見ることができた。
 
 記憶は定かではないが、86年のメキシコ・ワールドカップの予選を確かブラジルで? 94年アメリカ・ワールドカップのグループステージをサンフランシスコあたりで? そして、98年フランス・ワールドカップの開幕戦と2002年日韓ワールドカップのドイツとの決勝だ。
 
 2002年は記憶に新しいので確かだ。僕は17年ぶりにセレソンブラジルを生で観戦したことになる。
 
 今回のコパ・アメリカでのブラジルは、試合を重ねるごとにまとまり、自信を得ていった。開幕戦のボリビア戦を観戦したが、決して出来は良くはなかった。
 
 謙虚さと貪欲さ献身さに欠けているように見えた。結果は3-0の完封勝利と危なげない開幕を迎えたが、その後への不安を感じるような試合でもあった。
 
 予感は的中し2戦目のベネズエラには0-0スコアレスドロー。3戦目のペルー戦を迎える前にはブラジル代表に対して良い報道はなく、ネイマール不在と決定力のなさばかりが取り上げられていた。ペナルティエリア内でのインテリジェンスの低さと、チッチの選手起用から采配まであまりポジティブな報道はされていなかった。
 
 結果的に、相手に与えたゴールは、決勝のペルー戦での1失点のみだった訳だから守備は安定していたと言いたいところだが、最初の2試合は特別に守備が強いという感じはせず、相手にチャンスも作られていた。
 
 そのブラジルが変わって見えたのはやはり3試合目のペルー戦。これはサンパウロのアリーナ・ド・コリンチャンスで行なわれ、運良く現地観戦できたが5-0での圧勝。僕の描くセレソンブラジル像に近づく内容と結果であった。
 

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