【松本】「このままだとオリンピックに出られない」さらなる高みを目指す前田大然の危機感

2019年06月30日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

ふとひとりになった時に考える。「このままでいいのか」と

フル出場したG大阪戦では、惜しいシュートを放つも決め切れず。疲れはあったが、ただ最後まで懸命に走り続けた。写真:滝川敏之

[J1第17節]松本1-3G大阪/6月29日/サンアル
 
 27日にブラジルから帰国し、2日後のG大阪戦に先発フル出場。コンディションについて訊かれた前田大然は、「しんどかったですけど」と正直に話した後、「それは言い訳にはできない。今日はチームのために、最後までやりたかったので。でも勝てなくて本当に残念です」と悔しさを滲ませた。
 
 先制を許す展開も、飯田真輝のゴールで同点に。だが、その後に2失点。「チャンスはむしろ相手チームよりはあったと思うので、それを決めるか決めないか。そこの差が出た」と敗因について語る。
 
 前田自身も後半に2本の惜しいシュートを放ったが、ゴールネットを揺らせなかった。FWとしてチームを勝たせられなかったことに小さくない責任と、自らの不甲斐なさを感じていたに違いない。そして危機感も――。
 
「このままだと、僕自身、オリンピックに出られないと思う。もっともっと成長しないと厳しい」
 
 先日のコパ・アメリカで待望の日本代表デビューを果たした。ただ、目に見える結果は残せなかった。貴重な経験にはなったかもしれなかったが、到底納得できるパフォーマンスではなかっただろうし、自分が今、世界でどのレベルにあるのか、その厳しい現実を突きつけられたのだろう。
 
「本当にこのままだと、なんていうのかな、差が開いていくだけだなって、海外に行って感じました」
 
 試合になれば、無心でプレーできる。だが、ふとひとりになった時、あれこれと考えこんでしまう。「このままでいいのか」と。
 
 何よりも山雅を勝たせたい。疲労はあるけど、それを言い訳にはしたくない。今のままでは東京五輪にも出られない、だからもっともっと成長しなければ……いろんな想いを胸に、G大阪戦のピッチに立っていたのだろう。普段ならしないようなトラップミスをして流れを切る場面があった。それでも、一心不乱にボールを追いかける前田の姿が印象的だった。
 
 考えることが増えたようだが、「でも、成長するにはそういうのも必要かなと思います。あとは自分次第。良いほうに行くように頑張りたい」と気丈に前を向く。
 
 今は産みの苦しみかもしれない。初めてのJ1の舞台、初めての日本代表でのプレー。前田の前には、大きな壁が立ちはだかっている。それを乗り越えようと、21歳の若武者は必死にもがいている。
 
 6月13日に一児の父になった。「まだ奥さんの実家にいますけど、ちょっとだけ」と、帰国してすぐ会いに行き、愛しい我が子をその腕に抱いたという。遅ればせながら祝福の言葉を述べると、「ありがとうございます」と頬を緩めた。その笑顔を、今度はピッチの上でも見せてほしい。
 
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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