“昨季を超える”を掲げる町田の次なる一手「進化版ワンサイドアタック」の完成度は?

2019年06月29日 郡司 聡

今季は背後のスペースを消してくる対戦相手が続出

昨季4位に食い込んだ町田は今季、J1昇格を現実的な目標として捉える。写真:田中研治

 チーム改革に、痛みはつきもの――。現状の町田は、その現実に直面している。そう言っては、大袈裟だろうか。
 
 J1昇格を目標に掲げる今季の町田は、"昨季を超える"をスローガンに戦っている。そのための新たなトライが、ボールをつなぐアプローチを取り入れていることだ。
 
 これまでの町田は、相手の背後で起点を作ることを最優先に、背後へのロングボールを多用していたが、今季はそうした町田の特徴を鑑みて、すかさず後方のスペースを消してくる対戦相手が続出。次なる"一手"として、チームは対戦相手が背後のスペースを消すことで生じるスペースで、ボールを受ける選手を有効に使いながら、ボールをつないでゴールまでの道を探る"ワンサイドアタックの進化版"に取り組んでいる。
 
 ある程度、"オートマチック"に相手の背後へシンプルにロングボールを入れる形から、相手の立ち位置を含めた状況次第で攻めのアプローチの選択を変える必要があるため、選手たちには的確な状況判断が求められている。しかし、状況判断に齟齬が生じれば、チームは危険に晒される可能性がある。16位に位置する町田がここまで突き抜けられない背景には、チーム改革によって生じる"ジレンマ"が隠されている。
 
 例えば直近の公式戦であるJ2・19節、ファジアーノ岡山戦の失点シーンは、チームとしてトライしていることが結果的に裏目に出る格好となった。開始6分、右サイドハーフの森村昂太は、同サイドの前方にポジションを取っていた中島裕希へ、グラウンダーの縦パスを選択。しかし、縦パスを濱田水輝にカットされると、そのボールロストを出発点にカウンターを食らい、イ・ヨンジェに先制点を奪われてしまった。
 
「個人的には失点につながるパスミスをしてしまった」と猛省した森村は、顔を上げた際に、中島と"アイコンタクト"を交わしたうえで「足元につける選択をした」と振り返る。試合後、ロッカールームで中島とコミュニケーションを図った森村は、パスの受け手となる中島が「グッと裏へ抜ける動きをすることを考えていた」ことを直接聞いたという。
 
 シンプルに背後を突くことが第一優先とも言えた、従来の町田であれば、ある種の状況判断のズレは生まれなかったはずだが、選択肢に幅があることで、結果的にそれが裏目に出る形となった。さらに前述の岡山戦だけではなく、ボールをつなぐ過程でボールを失い、それが失点に直結するシーンは、前々節の長崎戦でも見られた光景だった。
 
 もちろん、パスミスで失点のきっかけを作った森村を責め立てようといった類の話ではない。CBの酒井隆介は「チームとして少しやり方を変えている中での失点でもあるため、仕方がない部分はある。なくすための努力を毎日しているし、最後は自分が守れるようにしたい」と話している。新たなトライには、痛みが伴うことは、チーム内でも十分に共有されている。
 

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