悔し涙は止められずも…弱みを見せなくなったエース、岩渕真奈は東京五輪でさらに覚醒した姿を見せてくれるのか?

2019年06月28日 早草紀子

ピッチ上で激減した岩渕のある仕草とは?

オランダ戦では攻撃の起点として機能した岩渕。来年の東京五輪で悔しさを晴らしたい。写真:早草紀子

 3大会連続のファイナル進出へ期待を寄せられながらラウンド16で早々に大会を去ることになったなでしこジャパン。後半に訪れた決定機の数や、決定打となってしまったハンド判定など、「たられば」要素が満載のなんとも悔しさが拭いきれない敗退ではあった。が、結果は結果。「それがすべて」と、悔し涙は止められずとも自らの実力不足に一切の言い訳をしなかったのが岩渕真奈(INAC神戸)だった。

 
 高倉麻子監督には就任した当初から、岩渕をチームのエースに成長させるという明確な意図があった。これまでは偉大な先輩選手の背中を追いかけるだけでよかった岩渕も、先頭に立つ立場になった。ピッチのオン・オフ問わず、甘えは許されない。指揮官はスタミナに問題のあった岩渕を、ユース年代を卒業したばかりの選手たちの前でフル出場させることでその責任を自覚させた。そして試合を誰が決すのかを時には言葉で、時には起用で、エースとしての責務を求め続けることをやめなかった。
 
 最近ではピッチ上で激減した岩渕のある仕草がある。前線へのダッシュのあと、シュート後のポジションへ戻ったあとなど、かつての岩渕の疲労度は分かりやすかった。肩で息をし、顔をゆがめながら腰に手を当てて回復を待つ。途中交代であっても、だ。「あれ?もう疲れたのか?」と二度見する程度には頻繁に見られたシーンだ。それが今はほとんど目にすることがない。当然フィジカルの向上はあるだろうが、それ以上に内外に弱みと取れる行動は見せなくなった。
 
 さらにオランダ戦での岩渕は「自分でゴールを奪う」という気迫をピッチ上でいかんなく体現した。チャンスがあれば、縦横構わずDFを手玉に取りながらターン、ドリブル、フェイント――持てる技術をすべて駆使してボールを運んだ。自身でフィニッシュまで行く道筋と、味方の上がりとを天秤にかけながら冷静さも失わなかった。長谷川唯(日テレ・ベレーザ)が決めた同点弾のアシストがまさにそれだ。
 

次ページどれだけDFに囲まれようと、倒れずにボールをキープした岩渕

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