エクアドル戦で“厄介”だった久保建英。特筆すべきはボールを隠すキープ術【コラム】

2019年06月25日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

緩急のつけどころも光った

久保のボールキープは実に嫌らしい。写真:Getty Images

 久保のところにボールが入ると何か起きそうな気がする。これは、エクアドル戦での感想だ。37分に左足でシュートを打った場面、68分、79分、90分過ぎに良いスルーパスを出したシーンなどがまさに"ワクワク感"を提供した瞬間である。
 
 とりわけ際立ったのがボールの持ち方。相手にプレッシャーをかけられても、絶妙なコース取りで"ボールを隠し"、潰されたとしてもファウルをもらう。これは簡単なようで、かなり高等なテクニックだ。
 
 今季のFC東京の試合を見ても分かりとおり、久保がボールを持つとマーカーはなかなか寄せ切れずにいた。これは久保が相手の足が届かないところにボールをキープしているからであって、そこにこの18歳の才能が見て取れた。
 
 緩急のつけどころも光った。22分に川島のスローイングからピンチを招いた直後、久保はボールが来ても急がず、ゆったりとボールを回した。チームが浮足立ちそうなシーンで呼吸を整える意図があったかは定かではないが、結果的にそこでのゆったりとしたボール回しで日本は落ち着きを取り戻した感がある。
 
 もちろん、チリ戦、ウルグアイ戦を含めて目に見える結果を残せなかった点はいただけない。エクアドル戦の後半アディショナルタイムにネットを揺らしたシュートもオフサイドの判定で幻のゴールとなっている。なにより結果にこだわっているだろう本人も、エクアドル戦の出来には満足していないはずだ。
 
 それでも、細部を見れば久保の基本技術の高さは間違いなく光った。ドリブルの持ち方、パスを出すタイミングはひと言で"嫌らしい"。体幹もしっかり鍛えられているようで、相手からしたら実に厄介なアタッカーになった印象だ。
 
 メンタル的な部分も重要なファクターとなるサッカーにおいて、相手に「厄介」と思わせるのは極めて大事。その意味で、エクアドル戦の久保は結果が残せなかったとはいえ、良い仕事をしたとも言える。
 
 コパ・アメリカでの活躍を受け、A代表で継続して使っても面白いのではないかという期待感を抱かせてくれたのが久保だった。レアル・マドリ―での立ち位置、起用法にもよるが、これから始まるワールドカップ・アジア予選でもきっと久保は重要な戦力になるはずだ。
 
文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)
 
 
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