【J1・31節クローズアップ】G大阪、痛恨のドロー……残り3試合で若きエース宇佐美に問われる底力

2014年11月03日 下薗昌記

「2得点になるか、2度の決定機で終わるかは紙一重」

ここ6試合ゴールがない宇佐美。逆転優勝に向けてエースの一発が期待されるところだ。(C) SOCCER DIGEST

 アディショナルタイムに痛恨の同点弾を食らった仲間たちの戦いぶりを、宇佐美貴史はベンチで見つめていた。
 
「僕個人を含めて、もう1点取っていれば試合を終わらせていたと思う」
勝利に導くゴールを決めればスポットライトが当たる反面、少しでも得点から遠ざかったり、決定機を逸したりすれば手のひら返しで指弾されるのがエースの肩書きを持つ男の宿命だ。
 
「先制点を取り、その後もビッグチャンスが何回かあったけど、決め切れないという展開だった」(長谷川健太監督)。高卒のルーキーならば、この日のパフォーマンスを責めるのは酷というものだが、宇佐美はドイツでのプレー経験を持つ6年目の中堅選手である。2度のシュートがポストとバーに嫌われた背番号39は、仙台戦に限っては戦犯と言わざるを得ない出来だった。
 
 リーグ戦における驚異的な巻き返しを支えてきた宇佐美ではあるが、その得点は9月23日の清水戦以来、6試合途絶えている。得意なエリアとプレーパターンが制限されるパトリックと2トップを形成することもあり、最近は引き気味の位置から持ち前のロングキックの精度を生かしてピンポイントパスを繰り出すことも珍しくない宇佐美ではあるもの、最大の持ち味はやはりそのシュート力である。
 
 ただ、22歳の日本人エースは自身が初めて経験するリーグ戦終盤でやや壁にぶつかっている感がある。リーグ戦再開後、6点をマークしている宇佐美だけに「貴史に対してはどの相手も気合いを入れてマークして来るし、一瞬の隙があれば点を取れる選手なのでそれは当然のこと」(今野泰幸)。
 
 得点から遠ざかっているだけでなく、課題でもある動きの質が余りにも低調だったナビスコカップの準決勝第2戦後には、長谷川監督から「優し目のカツ」(宇佐美)を入れられたというが、たしかに下降気味の調子は底を打ったと言える。
 
 復調のバロメーターは積極的な仕掛けの回数だ。前節のFC東京戦でも得点こそなかったものの力強いドリブル突破で徳永悠平を弾き返すなど、エースとしてチームを牽引する姿勢をアピール。仙台戦でも50分には阿部浩之のパスに抜け出すと右足を一閃――。ポストに嫌われたものの、その鋭い振り足から放つショットでニアを射抜いたのは宇佐美ならではのプレーだった。
 
「2得点になるか、2度の決定機で終わるかは紙一重。ただ、そこでの質が求められるポジションでもある」
 佳境を迎えたシーズン終盤における自らの立ち位置をこう言い切った宇佐美。逆転優勝がかかる残り3試合で問われるのは、G大阪というチームの地力と22歳の若きエースの底力である。
 
取材・文:下薗昌記
 
G大阪 1-仙台
得点者/G=大森(46分) 仙=柳沢(90+3分)
 
J1・31節(11月2日)の結果
G大阪 1-1 仙台
名古屋 2-2 FC東京
C大阪 1-3 甲府
柏 2-0 徳島
新潟 1-2 鹿島
川崎 2-3 清水
広島 1-1 大宮
鳥栖 2-1 神戸
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