ビダルに目をつけられても積極性を失わなかった中島に称賛の声も。ただ南米勢相手には“賢さ”が必要だ【蹴球日本を考える】

2019年06月18日 熊崎敬

良くも悪くも若さが出た五輪世代の森保ジャパン

序盤からアグレッシブに仕掛けた中島にはチリや現地のファンからも称賛の声が聞かれた。(C) Getty Images

 日本は五輪世代中心の若いメンバーでコパに挑んでいるが、その若さがいい面でも悪い面でも出た。
 
 いい面は、一人ひとりが積極果敢にプレーし、ボールを前へ前へ運ぼうとしていたところ。最後は大差がついたが、最後までゴールを奪おうとする姿勢は好感が持てた。
 
 悪い面は、ペース配分ができなかったところ。
 前半はチリのパスワークに走力で対抗し、互角に持ち込んだが、後半には運動量が落ち込んだ。前から奪いにいくと背後を突かれ、自陣に下がると、今度は素早い揺さぶりでサイドを深くえぐられる。
 
 日本は長く走力ありきのサッカーをしているから、こうした形で負けるのは必然だ。次のウルグアイ戦も同じ形でやられる可能性は、残念ながら高い。
 試合巧者が相手になると、走力だけではどうにもならないものだ。仮にベストメンバーでチリと戦ったとしても、勝敗を変えられる可能性は低かっただろう。
 
 チャレンジ精神で王者にぶつかり、力尽きた日本に対して、チリはきっちりとゲームを動かした。
 
 チリは序盤から中島の鋭い仕掛けに苦しんだが、危険人物をそのまま放置するようなことはしない。20分前後から、中島にボールが入るたび、間髪入れずにビダルが厳しく寄せるようになった。
 これは監督の指示というより、ビダルとチームメイトの自主的な判断だと思う。このレベルの選手なら、それくらいのことはやる。
 
 ただビダルに目をつけられても、中島は積極性を失わずに仕掛け続けた。スタジアムからの帰路、チリ人やブラジル人が「あの10番は良かった」とほめていた。これは自信にしていい。
 
 またチリは、後半立ち上がりにパスのテンポや長短に工夫を凝らし、前半に輪をかけて日本を走らせようとした。これで彼らは一気に主導権を握り、2点目を奪う。
 
 状況に即して試合を動かしてきたチリに対して、日本は正直すぎた。前半に出し切って、後半に尻すぼみ。最後まで見せ場は作ったものの、王者の手の平で転がされた印象だ。
 
「絶対に負けられない戦い」というフレーズがあるが、南米勢にとってのコパ・アメリカがまさにそれだ。とくに日本(やカタール)のようなゲストが相手になると、文字通り負けられない戦いとなる。
 
 しっかりと勝ちにくる南米勢から日本が勝点を奪うには、頑張りだけでは物足りない。ペース配分はもちろん、賢く戦わなければならないだろう。
 若くて素直で頑張るチームは、どれだけ賢くなれるだろうか。
 
取材・文●熊崎 敬(スポーツライター)
 
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