【山形】首位攻防戦で決勝アシスト! ニューヒーローは“首位”東京からやってきた「持ってる」右ウイングバック!

2019年06月17日 頼野亜唯子

育成型期限付き移籍で加入した柳を誰よりもサポートしたのは、他ならぬライバル!?

今季、育成型期限付き移籍で山形に加入した柳。首位攻防の水戸戦で決勝点をアシストした。(C) J.LEAGUE PHOTOS

[J2リーグ18節]山形1-0水戸/6月15日/NDスタ
 
 勝点33で並ぶ首位・水戸と2位・山形の直接対決。J2前半戦の天王山は、息詰まる緊迫の90分をホーム山形が1−0で制した。
 
 ひりつくような0−0の均衡を破る阪野豊史のゴールを演出したのは、今季FC東京から育成型期限付き移籍で加入した柳貴博である。66分、右サイドでパスを受け前に運ぶと、低い弾道のクロスを蹴り込んだ。誰かが入って来てくれるはずだと信じたゴール前には阪野が走り込んでいたが、ボールは阪野のわずか手前でバウンド。
 
「正直、難しいバウンドでウワーッ!と思ったのですが、阪野選手がうまく決めてくれました。自分の中では満足していないクロスでしたが、決めてもらえたことは自分にとって自信になる。本当に今日は助かりました」
 
 簡単ではないシュートをきっちりと決め、自分に1アシストの数字を記してくれたエースへの感謝の言葉には、実感がこもっていた。
 
 中学生年代からFC東京の下部組織で育ち、トップチームに昇格。U-18から年代別日本代表にも選出されてきたタレントだが、プロ入り後はもっぱらFC東京U-23のメンバーとしてJ3を戦って来た。今季新たなチャレンジの場、成長の場として選んだのが山形だ。
 
 しかし、新天地でポジションを取ることはそう簡単ではなかった。主戦場となる右ウイングバックには、精度の高いキックを武器にビルドアップにも得点にも絡む三鬼海がいた。今季も三鬼は序盤の快進撃に貢献。柳の出場機会は15節まで4試合、いずれも10~20分程の途中出場だった。
 
「一緒にやっていて、(チームの)三鬼選手への信頼が厚いのを感じていました。でも、それを超えて自分を出したいと思わせるプレーをしなければいけない。だからいつチャンスが来てもいいように、準備はしていました」
 
 実は、初めての移籍に戸惑う柳を誰よりも気にかけていたのは他ならぬ三鬼である。山形で出会うまで面識のなかった5歳下の柳と「なぜか波長が合う」と三鬼。キャンプを終え、山形に戻ってから柳の住居が決まるまでの約1か月、自分の部屋に住まわせ、食事、洗濯、不動産会社との連絡と、文字通り衣食住に渡って面倒を見た。柳もまた「めっちゃ仲がいい」と言う間柄だ。
 
 その三鬼の負傷を機に、柳にチャンスが巡って来た。16節・鹿児島戦から木山隆之監督は柳を先発起用。先発3試合目となったこの水戸戦で、柳はやっと自分のプレーを出せたという手応えを得た。
 
「前の2戦は自分の思うプレーができなかったが、今日は自分が1対1で相手に仕掛けられるシーンを多く作れた。仕掛けてクロスを上げたりコーナーを取るのが自分のプレーだし、ずっとやりたかったこと」
 

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