30日未明にカリアリ戦!! 好調・本田圭佑のプレーを現役イタリア人監督が徹底分析

2014年10月28日 ロベルト・ロッシ

ゴールはいずれも「中央寄り」でプレーしている時に生まれた。

キエーボ戦のFKを除く3ゴールは、いずれもカウンターから。ラツィオ戦では長い距離を走り切った。(C) Getty Images

 ミランは昨季、セードルフ監督の下で4-2-3-1、今季はインザーギ監督の下で4-3-3を採用しており、監督とシステムが変わっても、本田は右の攻撃的ポジションで起用されてきた。しかし昨季と今季では、本田自身のパフォーマンスに雲泥の差がある。
 
 昨季は1月からの5か月間で18試合(先発16試合)に出場し、1ゴール・2アシスト。ところが今季は6試合で4得点・2アシスト(※10月17日時点)。この違いはどこから生まれたのか。
 
 結論から言えば、最大の理由は起用法や戦術ではなく、ミランやイタリアサッカーへの順応だ。パフォーマンスの点では、現在のそれが本来の姿であり、昨季は様々な要因が絡み、能力を十分に発揮できなかった。
 
 現在のミランにおける本田の位置付けは「攻守に貢献する左利きの右ウイング」。ビルドアップでは右サイドに開き気味の位置を取り、SBまたは中盤から足下にパスを受ける場面が多い。重心が低く、強靭な肉体を駆使したキープ力を備えるため、滅多なことではボールを失わない。
 
 そして、そこからライン際を縦に持ち上がるのではなく、ゴールに向かって斜め方向に仕掛けるのが、最も多いパターンだ。ただ、この形からフィニッシュの場面を作り出しているかと言えば、そうではない。
 
 これは、相手DFが左足で仕掛けるコースを切って対応してくるうえ、本田が相手をドリブルやフェイントでかわしても、完全に抜き去るだけの瞬発力がないため、1対1の突破からシュートやアシストまで持って行くのが難しいからだ。
 
 本田の重要なレパートリーのひとつが、近くの味方を使ったワンツーであり、パス交換からエリア内に侵入し、シュートやアシストにつなげる。しかし、ワイドに開いたポジションでは近くに味方がおらず、コンビネーションで突破を試みる機会は少ない。
 
 それゆえ右サイドでボールを持った時、相手を抜き切らずにクロスを入れるか、そうでなければ安全策を取って、サポートに入ったSBやインサイドハーフにボールを戻すか、そのいずれかを選んでいる。
 
 いい形で攻撃に絡むのは、むしろ前に攻め残っている状況からのカウンターだ。4ゴールのうち、キエーボ戦の直接FKを除く3ゴールは、いずれもカウンターでゴール前に入り込み、フィニッシュに絡んだもので、持ち前の得点感覚やシュートセンスが生きたゴールだった。
 
 とはいえ、ここで強調したいのは、どのゴールも「右ウイング」というポジションには関係なく、中央寄りでプレーしている時に生まれたものだということ。そして、6試合で6本という本田の総シュート数が示すように、残念ながらフィニッシュに絡む頻度が高いとは言えない。
 
 一方の守備に関しては、相手SBが上がった時に自陣深くまで戻る仕事をこなしており、攻撃陣のなかで守備の貢献度は最も高い。インザーギ監督が右ウイングで起用している理由のひとつも、この献身的な守備にあると見て間違いない。

次ページ本田の能力を最も生かせるのは、やはりトップ下だ。

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