【英国誌記者】18歳の若者が持つ世界的にも稀な影響力!久保建英は一流の名門クラブで“1年生”として技を磨くべきだ

2019年06月12日 マイケル・プラストウ

18歳になったばかりの選手がこれほどの影響力を持つのは世界的にもあまり前例がない

エルサルバドル戦でA代表デビューを飾った久保。コパ・アメリカでも存在感を示せるか。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 エルサルバドル戦の後半、久保建英が初めてのフル代表のピッチに立つべく、準備を始めた瞬間にさえ、観客からは得点が入ったような歓声が上がった。実際にそのピッチに立てば、観客はもちろんメディア席にもどよめきが起こり、その興奮は英国人の私にとっても、非常に感動的なものだった。今ここに、私は歴史的な瞬間を見ているのかと。
 
 大きな進化を遂げつつある18歳の若者にとって、スーパースター的な扱いや過度な憧れの対象となること、そして少々クレイジーな蒸し暑さのなかでの夏場の戦いは、これからの成長にはあまり良くないものだ。まだまだ周りを考えないで、普通の若者として勉強し続けてほしいと願う。
 
 久保は確かに特別な才能を持っている。努力や成長ぶりも見事だ。独特なサッカースタイルがあるし、だからこそ今までの日本のスター選手との直接的な比較は難しい。中田、小野、現代表選手の中島などとはまた特徴が違う。
 
 ピッチ上の状況をよく見て、常に縦に、ゴール方向に走る。豊かな想像力と素早く的確な判断で、効果的なワンタッチパスを繰り出す。ドリブル突破や柔らかい動きで相手をかわしたり、軽快なフリックで攻撃を加速させるシーンを見れば、誰もが「速い」、「巧い」「飛び抜けた才能がある」と思うだろう。
 
 そして、久保はいつもゴールを目指し、自分で正確に決める力もある。
 
 初代表戦よりも、未来の伝説となる可能性があるのは、2得点を挙げた6月1日の大分戦だ。90+1分の得点は特に感動的だった。あるいは、これがJリーグでの最後の試合にならないとも限らない。
 
 クラブ側は最後まで久保のこれからについて、何も言わないように覚悟していた。マッチプログラムもその日、ベテランの森重をフィーチャーした。しかし、試合が終わると、FC東京は勝点差6でリーグ首位の座を守り、昨シーズン後半の得点力不足をすっかり解決に導く主役となったのは、17歳の久保だった。おそらく、本当に抜けてしまったら、リーグ首位のチームにとって、様々な影響を与えてしまうに違いない。18歳になったばかりの選手がこれほどの影響力を持つのは、世界的にもなかなか前例がないことだ。
 
 試合後の記者会見で、最後の最後に、長谷川監督は「なんで抜けてしまうかな」のような言葉を囁いた。まさに、東京は久保抜きに首位を守れるか、楽しみだ。きっと出来ると思うが、ダメージは小さくないだろう。
 
 しかし、未来が今まで通りのままでうまくいくのかどうか、その悩みを有するのはFC東京だけではない。久保はまだたった18歳だ。18歳といえば、一般的には大学へ行く年齢で、サッカー選手にとっては、トップチーム入りする年齢でもある。FC東京はここまで見事に育て上げた。J3に参戦したり、時には報道の量を抑えたりして、久保を本当によく守ってきた。しかし、もうA代表になったからこそ、日本という環境が限界になった面はあるだろう。さらなるレベルアップには、海外へ目を向けるしかない。
 

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