【岩政大樹】誰もが感じた「消化不良」感の正体と、それでも動かなかった森保監督の狙い

2019年06月06日 岩政大樹

危機感がもし選手にあれば、もっと違う色の試合になったのではないか

森保監督は3-4-2-1というシステムを選手に与え、あとは自主性と個性に任せた。写真;金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 気のせいでしょうか。勝利への執着心が、ゴールへの渇望が、わずかですが淡白に見えたのは。
 
 結果論でしょうか。だからスコアレスドローに終わったと見るのは。
 
 フルメンバーで臨むのはワールドカップ予選前最後となるテストマッチ、キリンチャレンジカップ。その初戦トリニダード・トバゴ戦は消化不良に終わったように感じました。
 
 エクスキューズはたくさんあります。森保監督が初めて3バックを試した試合でした。ヨーロッパ組はシーズンが終わったところで、特に昨年のロシア・ワールドカップに出場した選手たちは精神的に限界でしょう。「淡白に見えた」とする見解自体も、正確にピッチ内の選手たちの汗を表しているとは私自身思っていません。
 
 ただ、そう見えたのです。

「鬼気迫るものがあったか。その目に生死をかけた炎が宿っていたか」と言えば、「そういう試合ではない」という人もいるでしょう。しかし、「日本代表」とはそうであっていいのでしょうか。
 

 私が感じた「消化不良」感は、おそらく3バック云々よりもそこにあったと思いました。確かにいろいろな難しさはあったのだと思います。ただ、それならなおさら、結果を出さなければいけない危機感がもし選手にあれば、もっと違う色の試合になったのではないかと。
 
 そのうえで、森保監督がここで初めて導入した3バックについて見ていきましょう。
 
 森保監督はおそらく、システムと配置以外はほとんど何も明確なことは言わずにピッチに送り出した、完全なテストとしてこの試合を使ったと思われます。
 
 攻撃時には3−4−3で基本的には定められた立ち位置に立つこと。守備時には5−4−1でブロックを組み、前向きな状態から守備に入ること。
 
 そこから先。例えば、攻撃時に中島選手がサイドや下りた位置取りをしたり、守備時に右サイドの堂安選手と酒井選手で縦にズレてプレスに行く構えを時折見せたことは選手たちによるアレンジだと思われます。
 
 まずは、3−4−3に現時点での主力を並べて試合をさせてみて、どうなるか見てみた。それが良いかどうかは別にして、森保監督はこの試合をそういう場にすることを選んだ。だから、最後までシステムをいじったりはせず、選手の特徴でアレンジを加えることに終始したのでしょう。
 

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