バルサに蔓延するグリエーズマンへの「拒否反応」――合意は棚上げ、チームは混乱【現地発】

2019年06月04日 エル・パイス紙

苛立ちを見せるエース

すでにアトレティコ退団を正式に表明しているグリエーズマン。バルサ移籍が確実視されていたが……。(C)Getty Images

 リオネル・メッシがアントワーヌ・グリエーズマン(アトレティコ・マドリー)に勧誘の電話を入れた。そんな噂がどこからともなく漏れ伝わってきた。ロッカールームで冗談交じりに「グリエーズマンに電話をかけた話は本当なのか?」と実際に問いかけたチームメイトの中もいた。

 しかしメッシは、「電話なんてしていない。去年も今年もだ。そもそもそういった類の電話は一切したことがない。この話はこれで終わりだ」と素っ気なく答えるだけだった。

 メッシは明らかに苛立っていた。グリエーズマンの関係者が、バルセロナに再接近させるためにメッシの名前を利用したことが事の真相のようだが、コパ・デル・レイ決勝の前日記者会見でも、この話題に水を向けられると、「その件についてはノーコメント」と素気なかった。

「好きな選手だよ。世界トップクラスの実力者だ」と語っていた1年前と比べて、明らかなトーンダウンだ。これはバルサの選手全員に共通して見られる姿勢でもある。

 最大の要因は、言うまでもなく昨年6月にアトレティコへの残留宣言を、ジェラール・ピケが制作に関わった映像を介して大々的に行ったことだ。ピケはノーダメージだったが、グリエーズマンはこの件によって大きく信頼を落としてしまった。
 
 マテ茶(アルゼンチンやウルグアイなど南米でよく飲まれているお茶)を嗜み、ディエゴ・ゴディンと親しくするなどグリエーズマンの「ウルグアイ愛」はよく知られている。しかしその退団発表の数日後、バルサのウルグアイ代表FWルイス・スアレスは、「グリエーズマンがウルグアイ人のミックスだなんてとんでもない。彼に俺たちの心は理解できない」と"口撃"している。

 一方、チームの重鎮のひとりは、論理立てて「ノー」の理由を説明する。

「カルレス・アレニャやリキ・プッチらマシア(バルサの下部組織の総称)出身の若手にどう示しを付ければいいんだ。彼らはずっとトップチーム昇格を目指して頑張っているんだ。それがあんなことをやらかした人間が、1700万ユーロ(約22億円)ものサラリーをもらうなんてありえないよ。

 ポジションはどこをやるんだ? 右サイド、左サイド、それとも9番? そういう役回りをさせるのであれば、すでにレオ(メッシ)がいるじゃないか」
 

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