「9番」を見切ったクロップと「エース」に固執したポチェティーノ。明暗を分けた指揮官の采配【CL現地レポ】

2019年06月03日 江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)

ともに故障明けで精彩を欠いていた

試合終了の笛が鳴る直前に抱擁を交わしたクロップ(左)とポチェティーノ(右)。軍配は前者に上がった。(C)Getty Images

 現地時間6月1日に行なわれたチャンピオンズ・リーグ(CL)の決勝は、リバプールがトッテナムを2-0で下し、14年ぶり6度目の戴冠を果たした。

 トッテナムのマウリシオ・ポチェティーノ監督は、試合前日の会見で「まだ先発させるか決めていない」としていたハリー・ケインをスタメンで起用。左足首を故障し、約7週間も実戦から遠ざかっているエースに試合を託す決断をした。

 結果的に、この"賭け"は裏目に出た。身体が重くキレを欠いたケインは、リバプール守備陣の厳しいマークもあって完全に沈黙。最初のシュートを放ったのは、すでに勝負が決した後半のアディショナルタイムだった。

 途中交代させる選択肢もあったはずだ。なにしろベンチには、アヤックスとの準決勝・第2レグでハットトリックを決めたルーカスと、ケイン不在の間に高さを活かして貴重な役割を果たしたフェルナンド・ジョレンテが残っていた。

 しかし、主砲を残したことで2枚の切り札の投入も遅れ(ルーカスは66分、ジョレンテは81分)、後手を踏んだ感は否めない。

 リバプールの右SBトレント・アレクサンダー=アーノルドは、前日会見で「警戒すべき選手」としてルーカスを挙げていた。そのブラジル代表アタッカーが、アディショナルタイムを含めても30分足らずしかピッチに立たなかったのだ。レッズとしてはさぞ助かったに違いない。
 
 対照的に、積極的な一手を打ったのが、リバプールのユルゲン・クロップ監督だ。1点をリードしていた状況で、58分にCFのロベルト・フィルミーノを下げ、ディポック・オリギを投入したのだ。

 ケインと同様、リバプールの9番も故障でシーズン終盤を故障で欠場。この試合ではシュートを1本も打てず、まったく存在感を発揮できていなかった。早めに見切りをつけてベンチに下げたのは、正しい決断だった。

 そしてこの交代策が見事に的中し、87分にCK後の混戦でジョエル・マティプからパスを受けたオリギが、左足を振り抜いて追加点をゲット。勝負を決めたのだった。

 この日のマドリードは日中からうだるような暑さで、21時のキックオフ時点での気温は30度。ビッグマッチを戦うには、過酷な状況だった。故障明けの選手にとっては、なおさらだろう。

 フィルミーノを早めに下げたクロップと、最後までケインに固執したポチェティーノ。両指揮官の決断が、明暗を分けた。

取材・文●江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)
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