「鳥栖らしい」は退化。就任後3連勝に導いた金明輝監督の“こだわらない”サッカーの意図は?

2019年05月27日 荒木英喜

「ポゼッションやカウンター、ロングボールとかそういうのでは考えていなくて…」

鳥栖は金監督が就任以来3連勝。降格圏を脱し、さらに巻き返しを図りたいところだ。写真:徳原隆元

 鳥栖が鹿島を破り5年ぶりの3連勝を飾り、6節から位置していた降格圏を脱出し14位へ浮上した。その要因となっているのがルイス・カレーラス監督からその座を引き継いだキンミョンヒ監督の指導力だ。

 5月7日に就任したキン監督は「鳥栖らしい」と言われることを「それは退化です」と話す。ただ、これは鳥栖らしさを否定しているわけではない。今や球際で激しく戦うことや相手より走るなどのハードワークは、どのJ1チームでもやっている当たり前のこと。それをチームのベースとしてやり続けることに加え、新たに何を上積みできるかにフォーカスしている。

 鳥栖といえば、前線のターゲットとなる選手を目掛けてロングボールを当てて、自慢のハードワークでそのセカンドボールを拾って攻撃するというイメージが強い。金監督はそこからの脱却を図っている。だからといってポゼッションサッカーを志向しているわけでもない。
 
 金監督は狙いをこう話す。
「ポゼッションやカウンター、ロングボールとかそういうのでは考えていなくて。点を取るために細かい技術というのは大事なので、そこにフォーカスしてやっています」
 
 鹿島戦などを見ても分かるように、金監督が就任してから鳥栖のビルドアップは変わった。サイドバックが高い位置を取り、センターバックが開いた間にGKやボランチが入り、じっくりとボールを回しながらビルドアップする。また、サイドチェンジも以前より増えている。
 
 もちろん、相手のプレッシングなどによってスムーズにボールを前に運べない時もある。そんな時は前線にロングボールを蹴る。金監督が話すようにポゼッションやロングボールなどひとつの形にこだわらず、ピッチ上の選手たちが局面局面で判断し、ポゼッションとロングボールを使い分けている。

 小林祐三にその使い分けを聞くとこういう答えが返ってきた。
「以前のように蹴らされているロングボールではなく、意図的に蹴っているロングボールなので、蹴る選手、受ける選手、拾う選手の連動はG大阪戦からかなり良くなっている。(今のつなぐビルドアップは)相手の布陣を間延びさせるという狙いもある。これを続けて、もっと自分たちがボールを持てるようになりたいし、そういうトレーニングをしています」
 

次ページ手段にこだわらず、ゴールを奪うために最適な選択をさせる

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