大学生唯一の日の丸戦士・上田綺世が天皇杯で奮闘!敗れた浦安の都並監督は「起点を作られた」と称賛

2019年05月28日 小室功

「自分の知名度が上がっていることも実感しますけど、だからといって特別なプレーをしようとは思いません」

法政大のエースとしてチームを牽引する上田。大学のリーグ戦では不振だったが、天皇杯では力強いプレーを見せた。写真:小室功

 得点こそなかったが、ピッチ上での存在感は際立っていた。
 
 迫力のあるエアバトル、堅実なポストワーク、シュートポイントを探りながらのゴール前への進入。さらには前線での献身的な守備と、90分間を通じたそのパフォーマンスは称賛に値した。
 
 ブラジルで行なわれるコパ・アメリカに参戦する日本代表に大学生ながらただひとり初選出された上田綺世(法政大)は、メンバー発表からわずか2日後、99回を数える天皇杯1回戦を戦っていた。大学生のフル代表入りはおよそ9年半ぶりのこと。将来を嘱望される若き点取り屋への関心は格段に上がっていた。
 
「注目してもらえるのは選手として嬉しいし、ありがたい。自分の知名度が上がっていることも実感しますけど、だからといって特別なプレーをしようとは思いません。チームのために今、何ができるか。そこをいつも考えています。日本代表に選ばれたのだから恥ずかしいプレーはできないとか、そういうことを意識し始めたら逆によくないので」
 

 周囲の喧騒とは裏腹に、若干20歳であることを忘れさせてしまうほど、冷静な口ぶりだった。
 
「これまで日本代表を背負ってきた選手なら、また違う気持ちが出てくるかもしれないけれど、自分はそういう存在じゃないし、そういうレベルにもいません。ピッチに立ったら、目の前の試合に勝つために全力でプレーする。それを継続していくだけです」
 
 日本代表のなかで、自分は何も成し遂げていない。まだまだチャレンジーにすぎない――。上田はこう繰り返し、足もとを見つめる。
 
 とはいえ、大学3年生ながら、Jリーグ屈指の常勝軍団である鹿島アントラーズ入りがすでに決まっていて、東京オリンピックに挑むU-23日本代表の紛れもなくエース候補。南米各国の猛者たちが集結するコパ・アメリカで、どんなテイストを醸し出してくれるのか、期待が膨らみ、周りは早くも前のめりだ。
 
「正直、今はまだ先(代表チーム)のことは考えられません。6月に入って、実際に大会も近くなったら、コンディションを整えるとか、そのために必要な準備をしたいと思いますけど。ただ、(日本代表に)選んでもらった以上、なぜ僕なのか、ちゃんと噛み砕いて考えなければいけないし、期待されている部分をしっかり表現していきたい。そこは選ばれたひとりとしての義務があると思うので」
 

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