J2徳島の未来を担う原石。渡井理己の進化過程を間近で見る楽しみ

2019年05月17日 柏原敏

6節の新潟戦でJデビュー。指揮官は「去年で言えば杉本、前川のような特長を持っている選手」

切れ味鋭いドリブル突破が魅力の渡井は、「どこかで周りと違いを作らなければスタメンには定着はできない」と闘志を燃やす。(C)J.LEAGUE PHOTOS

 プロ2年目の渡井理己。高校時代は静岡学園高で10番を背負った逸材。第96回高校選手権の静岡県大会決勝では、持ち味のドリブルでスタジアム全員の度肝を抜いた。約30~40メートルを持ち運び、5人は突破しただろうか。そのまま自ら先制弾を決めたのはいまも記憶に新しい。
 
 徳島ヴォルティスに加入することになった経緯にも触れると、5月1日付けで就任した谷池洋平強化部長(当時は強化担当)が中心となって積極的にアプローチ。時間をかけて姿を追い、高校3年時には毎週のようにリーグ戦の視察に静岡県へ通っていたのを記憶している。獲得背景には強化部が3人体制となり、フットワークが軽くなった要因もあるだろう。「ドリブルでひとり突破する選手はいますけど、3人くらい平気で突破できる選手はなかなかいませんよ」(谷池強化部長)。当時そんな話を聞いていたが、冒頭で前述した選手権予選により大袈裟な話ではないとわかった。

 ただ、渡井にとってプロ初年度のJデビューは叶わなかった。フィジカル面でプロの洗礼を受け、球際の争いで競り勝てずに倒れる場面が増えると、徐々にリズムを失い、ライン間で前を向くプレーやキレのあるドリブルも影を潜める期間が続いた。ただ、昨季終盤に"らしい!"というプレーが突如増え始めた。すると「去年から継続してきたことで、今年はだいぶん自分らしさを出せていると思う」と今季はプレシーズンから好調が続き、同カテゴリーレベル相手の練習試合でも安定して結果を残せるように。そして、リカルド・ロドリゲス監督からも「いいパフォーマンスが継続できている。練習試合だけではなく、練習に関しても」と上々の評価を得て、6節・新潟戦(〇1-0)でJデビューのチャンスを掴み取った。
 
 徳島が志向するスタイルにおいて、渡井のようなクリエイティブで個の突破ができる選手は欠かせない。また、「去年で言えば杉本太郎(現・松本山雅FC)、前川大河(現・アビスパ福岡)のような特長を持っているのが彼なのかなと思う」(R・ロドリゲス監督)と昨季までその役割を担ってきた主力2選手が移籍したいま、渡井にかかる期待は大きい。
 
 13節終了時点での出場記録は3試合・165分。「どこかで周りと違いを作らなければスタメンには定着はできない。出場した試合も悪くはないが、インパクトは残せていない」。まだまだこれからの選手ではあるが、未来の徳島を背負って立つであろう選手が一歩ずつ成長する姿をぜひとも追っていただきたい。
 
取材・文●柏原敏(フリーライター)
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