「まるで高卒選手と同じ扱いを…」開幕ベンチ外の仙台ボランチが殊勲の逆転AT弾を決めるまで

2019年05月13日 小林健志

加入当初は仙台のスタイルに馴染めず良さが消えた!?

ボランチの松下が後半アディショナルタイムに逆転弾を放ち、仙台を勝利に導いた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 J1リーグ11節の仙台対広島戦で、劇的な逆転ゴールを挙げ、勝利に大きく貢献したのがMF松下佳貴だった。今季、神戸からの完全移籍で加入したボランチで、精度の高いパスワークを駆使したゲームメイクを期待されていたが、ようやくその本領を発揮した。


 とりわけ後半は圧巻の活躍。スルーパスや、浮き球パスなど、広島のディフェンスラインの背後を取るパスが面白いように決まり出す。64分にはハモン・ロペスへ、70分には石原崇兆へ、85分には長沢駿のオーバーヘッドシュートにつながるパスをピタリと通した。「ハーフタイムに石くん(石原崇)と話して『ああいう走り方をするので』と言われたので、狙っていきました。欲を言えば、もう少し良いところに落とせればゴールにつながったかもしれません」とさらなる精度を求めていたが、広島の守備陣を疲れさせるには十分なプレーだった。
 
 そしてアディショナルタイム。「最初は石くんから(永戸)勝也にパスが出ると思い、クロスを待つ準備をしていたのですが、石くんが相手の逆を突いて自分に良いボールをくれました。ゴール前だったので、トラップしてシュートすることしか考えませんでした。うまくトラップが決まったので、良いリズムでシュートを打てました」と振り返った通り、狙いすまして振り抜いた左足が貴重な逆転ゴールを生み出した。
 
 そんな松下だが、仙台に加入し、キャンプを経て開幕後しばらくの間は、苦しい時期を過ごした。リーグ戦はずっとベンチ外。ベンチに入るようになったのは4月からで、先発出場できるようになったのは、4月20日の8節・鹿島戦からだった。
 
 加入直後苦しんだ理由のひとつは、仙台のスタイルだ。松下は相手の足下へ正確にボールをつなぐタイプの選手。このタイプの選手は、渡邉晋監督が「立ち位置」と称するスペースの概念、昨今流行りのポジショナルプレーに戸惑う傾向がある。渡邉監督は「最初、我々のやり方、立ち位置をどうやって取ろうか、どうやってボールを動かそうかということに対して、彼も一生懸命順応しようとしていましたが、もしかしたら彼の良さが消えてしまったのかなと、今振り返ってみれば思います」と、加入当初の松下を振り返った。松下自身も「キャンプからうまくやりたいことがまったくできないもどかしさがありました」とフィットできない悔しさを味わった。

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